1分でわかるNAFTAとは?
- アメリカ・カナダ・メキシコの自由貿易協定
- 関税の撤廃などで経済活性化を狙う
- 日本の自動車メーカーへの影響も
NAFTA(ナフタ)とは

NAFTAは、商品・サービスの貿易障害を撤廃し、国境を超えた移動を促進することなどを目的としています。 この目的の他にも、公正な競争条約を促進すること、投資機会を拡大すること、知的財産権の十分かつ効果的な保護・執行を行うこと、が目的とされています。 もともと、NAFTAは、1990年代のヨーロッパ共同体(EC)(現在のEU=ヨーロッパ連合)をはじめとする地域経済の統合化の流れに抗して、北アメリカに単一の経済圏を樹立することを目的としていました。 実際、NAFTAはGDP(国内総生産)の規模において、EUを超える世界最大の地域統合を達成しました。ただし、NAFTAの加盟国がアメリカ合衆国・カナダ・メキシコと少ないことから、一部の貿易や投資についての統合に留まっているのが現状です。
NAFTA(ナフタ)は自由貿易に関する協定

NAFTAは加盟する各国の自由貿易に関する協定です。 通常であれば、国同士でモノやサービスの貿易が行われる際には関税がかかります。 しかし、NAFTAに加盟しているアメリカ合衆国・カナダ・メキシコ間で行われる貿易取引は、原則として関税がかかりません。 NAFTAが結ばれたことによって、3カ国間のモノやサービスに関する貿易取引が活発化し、自分の国の経済を発展させることができます。 簡単に言えば、NAFTAに署名したことによって、3カ国間でモノやサービスを自由に取引することができるようになったのです。 実際、NAFTAの成立は、3カ国の経済を大きく発展させました。 実際、NAFTA締結以降、NAFTAの経済効果に関する分析がなされています。その研究結果によれば、NAFTAの成立はアメリカ合衆国・カナダ・メキシコという3カ国各国の経済と、その国々に住む一般市民に対して非常に有益であったことが示されています。
NAFTA(ナフタ)を締結までの経緯

アメリカ合衆国・カナダ・メキシコという3カ国がNAFTAを締結したのには理由があります。 NAFTA締結の理由は、1990年代前半から地域統合(ブロック経済)が台頭してきたことに起因します。 1993年には、欧州連合条約が発効したことによって、ヨーロッパの様々な国々が統合して、欧州連合(EU)が誕生しました。 一方で、東南アジアでは、東南アジア諸国連合(Association of South‐East Asian Nations:ASEAN)が台頭し、貿易圏を築いていました。ASEANそのものは1967年に結成されたものですが、1984年にブルネイが、1995年にベトナムが、1997年にミャンマー・ラオス・1999年にカンボジアが加盟するなど、勢力を強めていました。 こうした地域統合によるブロック経済に対抗するために、北アメリカ地域の国々もNAFTAを締結することによって、地域統合を進めたのです。
NAFTA(ナフタ)の加盟国はアメリカ、カナダ、メキシコ

NAFTAは、北アメリカ大陸に存在する3つの国によって構成されています。 アメリカ合衆国・カナダ・メキシコの3カ国です。 2019年1月現在、NAFTAの再交渉が行われている最中ではありますが、将来的にも新しい国が加盟する予定はないとされています。
NAFTA(ナフタ)の協定の内容

先にも説明したように、NAFTAは自由貿易に関する協定であるため、貿易関税の撤廃・直接投資の活性化を基本的な協定内容としています。 ただし、NAFTA加盟国は、自由貿易に関する協定の他にも、2つの補完協定を結んでいます。 それが、”NAAEC:North American Agreement on Environmental Cooperation(環境問題に関する補完協定)”と”NAALC:North American Agreement on Labor Cooperation(労働問題に関する補完協定)”です。 この2つの補完協定によって、貿易関税の撤廃だけではなく、知的財産権の保護、環境保護、農業自由化、交通インフラの共有化などについても、3カ国で協力することが約束されています。
関税の撤廃

NAFTAに加盟している3カ国の貿易では、全品目の関税が99%撤廃されています。 関税がないぶん、3カ国間での貿易が促進され、モノやサービスを自由に交換することができるようになっています。
直接投資の活性化

NAFTAには、投資について書かれた条項が存在しています。 その中で、NAFTA加盟国の多国籍企業に対する保護や紛争解決の枠組みが定められており、3カ国間で取引を行いたいと考える企業の直接投資を促進するための枠組みが用意されています。
NAFTA(ナフタ)の及ぼした影響

NAFTAを締結したことによって、アメリカ合衆国・カナダ・メキシコの経済と一般市民は大きなメリットがあったことが多くの研究で指摘されています。 地域的な貿易・投資を自由化し、域内の海外直接投資・貿易を促進するというNAFTAの目的は十分に達成できたという見方が有力です。 2018年には、NAFTAに代わって『米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)』に合意されたことが発表されたことからもわかるように、3カ国とも自由貿易の継続を望んでいます。
メキシコのマキラドーラゾーンの廃止

メキシコには、“maquiladora:マキラドーラ”と呼ばれる法律が存在します。もともと1965年に制定されたものです。 マキラドーラはもともとメキシコの産業を保護することを目的として成立しました。メキシコは国内経済が脆弱であることから、メキシコ以外で作られた製品に対する競争力がほとんどない状態にあります。 そのため、メキシコ政府がきちんとメキシコの産業を保護する必要があったのです。 もちろん、2019年現在も、マキラドーラはメキシコの産業保護という目的のために厳然と存在しています。 マキドーラを適用することによって、メキシコ国内から商品をメキシコ国外に輸出する際に、その商品を製造するために必要となった原材料・部品・機械などを無関税で輸入できます。無関税で輸入することができるため、その分安く商品をつくることができるようになります。
日本の自動車メーカーへの影響

アメリカ合衆国をはじめ、カナダやメキシコには、米国の自動車関連企業だけではなく、日本やドイツなどの企業も集積しています。 それぞれの企業は、お互いにNAFTA域内で原材料や部品などの調達を行っています。実際、北米で自動車を生産するために、自動車の部品や原材料は、NAFTA3ヵ国の間を何度も往復すると言われています。 そのため、NAFTAの協定内容が変われば、当然、日本の自動車メーカーにも影響があることになります。もしNAFTAがなければ、日本の自動車メーカーが北米に北米で販売することを目的とした自動車の生産を行う理由が無くなってしまうので、工場を建設したりするメリットがなくなり、北米から撤退する(投資を引き上げる)などの事態が考えられます。
まとめ

2017年にアメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプ氏によって、現在、NAFTAは再交渉の過程にあります。 その結果、NAFTAは「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」という名称に変わることが予定されています。 名称は変更されますが、NAFTAの基本的な目的である各国間の貿易・投資の促進という目的は変りません。そのため、NAFTAの基本的な協定内容を理解しておくことが非常に重要です。