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猿払事件の争点や違憲の可能性とは?判例を踏また真相と事件の問題点に迫る。

もくじ

1分でわかる猿払事件

  • 「猿払事件」は国家公務員の政治的行為が発端
  • 国家公務員の政治的行為の制限は憲法違反であるか否かが争点
  • 原告が敗訴し罰金が科せられた判決は大きな批判を浴びた

「猿払事件」は北海道猿払村に勤める郵政事務官が、ある特定政党の候補者ポスターを掲示したことが国家公務員法で制限されている政治的行為と見なされたことが発端です。 しかし政治的行為を制限することは表現の自由を保障する憲法に違反するとして争いが起こります。最終的に公務員の人権を訴えた原告側が敗訴し罰金刑を科せられたことが大きな批判を浴びた事件です。

猿払事件の概要

「猿払事件」は昭和42年に発生しています。北海道猿払村にある郵便局の郵政事務官が国家公務員法で制限されている政治的行為を行ったとして起訴されました。 しかし、郵政事務次官側は非管理職であったこともあり、憲法21条表現の自由を主張し違憲であると反論します。公務員の政治的行為の規制は違憲かを争点とし公務員の人権が問われることになった事件です。

国家公務員である郵政事務官が選挙ポスターを掲載した

「猿払事件」の発端は猿仏村にある郵便局の郵政事務官が、昭和42年の衆議院議員選挙が行われた際日本社会党を応援する為に6枚のポスターを公営掲示場に掲載したことです。 そればかりでなく他者に依頼しポスターの配布も行っていました。 国家公務員は国家公務員法102条によって政治的行為が制限されています。そのため郵政事務官の行為は特定の候補を支持する政治的行為とみなされ、国家公務員法に違反していると処罰の対象となったのです。

国家公務員は政治的な活動を禁止されている

公務員は憲法15条2項において国民全体の奉仕者であると明記されています。すなわち公務員は国民全体の共同利益のために働く人達ということです。 そのため公務員は国民の一部だけの利益になるような行為を認められていません。政治的な活動は国民の一部である政党や議員の利益のための行動なので制限されているのです。 また政治的に中立が求められていることも禁止理由の一つといえるでしょう。公務員は政治勢力や政権に左右されることなく常に中立の存在でなければならないのです。

国家公務員が政治的な活動を禁止されている事が違憲であるとの主張がなされる

公務員法違反を問われた郵政事務官は刑罰を不服として、国家公務員の政治的活動の禁止を憲法21条違反であると訴えたのです。 憲法21条は表現の自由を保障するものであり、国民は好きな時、好きな場所、好きな方法で好きなことが言える権利があるとしています。国家公務員の政治的行為の禁止はこの権利を侵害するもので違憲であると主張しました。 また合わせて憲法13条、個人の尊重にも反しているとして争いが起こりました。

猿払事件の裁判での争点

「猿払事件」の争点は、憲法上国家公務員の政治活動制限と表現の自由のどちらを優先すべきかでした。このような場合違憲であるか否かを審査し判断されます。 「猿払事件」の判決を振り返る前にどのような基準で判断がなされるのか違法審査基準についてまとめてみました。

二重の基準論

「二重の基準論」とは、違憲審査においては精神的自由権の侵害は経済的自由権の侵害より厳格な基準を持って審査するべきであるという理論です。 この厳格な審査基準の一つとしてアメリカ法に由来するLRAの基準が使われます。 LRAの基準とは「より制限的でない他の選びうる手段」のことで、「猿払事件」においては第一審と第二審においてこれが適用され、勤務時間外にポスターを貼る行為を処罰することは精神的自由権を侵害することにあたるとしました。

適用違憲

「適用違憲」の考え方として、「合憲的適用と違憲的適用が混在している場合、違憲となる可能性を無視してその法令を広く適用してしまうのは違憲」というものがあります。 「猿払事件」においては、第一審と第二審でこの考え方が適用され、国家公務員法の適用が違憲とされました。 最高裁においては意見が割れたとされていますが、最終的には「適用違憲」に否定的な意見が採用され、被告に国家公務員法が適用され有罪となりました。

猿払事件の判例

「猿払事件」が発生した昭和42年から昭和49年の最高裁まで争われ、最高裁は第一審並びに第二審の判決を破棄し原告である郵政事務官が有罪となりました。 第一審・第二審は何を根拠に原告を無罪としたのか、そして最高裁がなぜそれを覆す判決を下したのかを第一審から追ってみていきましょう。

地方裁判所での判例:無罪

「猿払事件」の第一審判決において昭和43年旭川地方裁判所は被告人に無罪を言い渡しました。 猿払事件の被告の行動は勤務時間外に行われ、国の施設を使用せず公正を害する意図なしで行った行為であり労働組合の組合活動の一環であったことを理由とし、このような行為に制裁を与えることは最小限の域を超えているとしたのです。 この第一審ではLRAの厳しい基準で判断され、国家公務員の政治的行為に対して限度なく一律に刑罰を科すことは違憲であるとされました。

高等裁判所での判例:無罪

検察側は旭川地方裁判所の無罪判決に対し事実誤認があるとして控訴、昭和44年札幌高裁にて控訴審が行われました。 札幌高裁は郵政事務官であった被告人の業務内容や、政治行為を行った過程について誤認があるとの主張を全て認めず控訴を棄却します。 「猿払事件」の被告が行った行為に刑事罰を加えることは必要最小限の域を超えるものであるという一審を支持しました。

最高裁判所での判例:有罪

第一審並びに第二審において原告の主張が認められた形の「猿払事件」は最高裁判決にて大きく覆ることになります。 最高裁は表現の自由の重要性を認めつつも、国家公務員の政治的行為は業務内・外に関わらず又職種や職務内容も制限なく一律禁止であるという見解でした。許してしまえばいずれ公務運営に行政が影響を及ぼすようになり、しいては国民の利益を損なうことになるとされたのです。 また第一審が採用したLRAの基準に関しては、アメリカの法であり我が国にそのままあてはめるのはふさわしくないとしました。

結果的に有罪判決となり5000円の罰金刑となった

「猿払事件」は事件発生の昭和42年から最高裁判決が下る昭和49年の6年間争われた事件です。 第一審・第二審と原告である郵政事務官側の主張が認められた形でしたが、最終的には有罪となり5,000円の罰金刑となりました。訴訟費用も原告側の負担とされ全面敗訴となりました。 将来起こりうるかも知れない大きな損害を回避するため国家公務員の政治的行為を一律に制限するという見解は大きな疑問を残しました。

関連の事件

「猿払事件」は公務員の表現の自由・人権についてが問われた事件です。日本では「猿払事件」同様、人権についてたびたび争いが起こっています。 人権は全ての人が生まれながらに持っている権利であり尊いとされながらも漠然とし具体的に説明できる人は多くはありません。

堀越事件

元社会保険事務所の職員であった堀越さんは休日、自宅付近のマンションの集合ポストに政党のビラを配布しました。この行為によって堀越さんは政治的行為を規制する国家公務員法違反で起訴されます。 この堀越事件は7年間争われ堀越さんは無罪となりました。公務員の政治的行為を一切禁止した「猿払事件」の判決を覆すようなものとなりますが、この判決も公務員の政治的行為を認めたわけではありません。   刑罰が科せられるのが政治的中立を損なう恐れが実質的に認められる行為に限られるとしたにすぎないのです。

三菱樹脂事件

昭和38年にある男性が大学を卒業し、三菱樹脂株式会社に3か月の試用期間ということで入社します。本採用を決まる身上書や面接で学生運動への参加を隠し虚偽の申告を行ったことが判明し会社側が採用拒否した事件です。 男性が学生運動に参加していたことは危険な思想の持ち主であると見なされてのことでした。男性はこのことを表現や思想の自由が尊重される憲法違反にあたると訴えたのです。 しかし、三菱樹脂側は私人間の問題に憲法は直接適応されないと争うこととなりました。13年間の争いの結果、三菱樹脂側が敗訴し和解しています。

まとめ

「猿払事件」については人権の解釈が争点となりました。人権は憲法で保障され大切で尊いものです。しかしその解釈も人それぞれであり、人権や自由をはき違えている人もいます。 「猿払事件」並びに関連事件を通して人権とは何をしてもよいということではないことがわかります。他者に危害や損害を与えない上での表現や思想の自由が保障されているのです。

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