MKウルトラ計画の闇。CIAが行った洗脳実験は後世に残すべき負の遺産か？

• MKウルトラ計画はアメリカCIAの秘密裏の人体実験
• 薬物実験なども行われ実験の証拠は破棄された
• 人体実験では被験者権利の尊重が重要

1950年代から60年代末ごろまでアメリカでやカナダでは原因不明の自殺が多発しました。その背景にはアメリカCIAの極秘プロジェクトの存在があったとされています。 そのプロジェクトの名前はMKウルトラ計画です。マインドコントロールの効果を立証するための実験で秘密裏に行われました。しかしMKウルトラ計画はその後証拠の破棄を命じられ、その計画の全貌は現在でも明らかになっていません。

MKウルトラ計画はアメリカCIA（中央情報局）がアメリカとカナダの国民を被験者として、1950年代初頭から1960年代末まで行われていたとされています。 その目的は人間に自殺願望や精神破綻をもたらす恐怖の兵器を開発させることにありました。朝鮮戦争で米軍捕虜が中国により共産主義者として洗脳されたことが注目されました。当時はまだ冷戦の最中であり、このような洗脳実験が進められたとしてもうなずけるかもしれません。

被験者はCIAの職員や軍人、一般人まで多岐にわたったとされていますが、実験の内容は知らされていませんでした。当時のCIA長官であるヘレムズ氏により証拠の破棄が命じられましたため、いまだに詳細ははっきりとしていません。 残った文献によれば、アメリカ全体で80か所の施設に属する185名の民間の研究者がこのプロジェクトに加わり、３つの刑務所が研究の実施場所、市民が実験台になっていたとされており、かなり大掛かりなプロジェクトであったことが推察されます。

MKウルトラ計画はその人体実験の内容が酷く、明るみに出ると大きな問題となりました。実験の方法にはさまざまなものがありましたが、代表的には薬物実験と精神実験があげられます。いったいどういった実験が行われたのでしょうか。

薬物実験ではさまざまな薬物が投与されました。覚醒剤のLSD、サリン、ソマンといった神経ガスです。 LSDは今でも流通しているドラッグですが、自白促進剤のような効果があり犯罪者を自白に追い込んだ例もあったとされています。サリンはオウム真理教が製造して東京の地下鉄でテロ行為でばらまいたことで有名です。

そのほかにも電気ショック療法や精神操作などが行われましたがこれらも非人道的なものでした。 特に心理学者ドナルドキャメロンが行った実験では、アミタール、アンフェタミンを投与し患者を眠らせ、1日の半分近くの時間精神操縦をさせました。しかもそれを10～15日間行ったとされています。患者は暗い部屋でゴーグルをはめられ、余計な音が聞こえず身体への刺激も奪われ、心理的に孤立していったのでした。

MKウルトラ計画のほかにも大学や公設の研究機関では人体を使った洗脳・精神実験がされてきました。もちろん学術的には必要なテーマであったかもしれません。しかしこれらの実験はやり方によってはその危険性が指摘されており、被験者も研究者もそのことを十分に認識して行う必要があります。

非倫理的な人体実験研究を防止するための指針としてニュルンベルク綱領があります。ニュルンベルク綱領は第二次世界大戦後のニュルンベルク裁判の過程で生まれた、人体実験に関する一連の倫理原則です。 この綱領には具体的には被験者の自発的な同意が必須であり、「不必要な肉体的および精神的な苦痛や怪我を避けるべき」などが記されています。

アメリカ合衆国のスタンフォード大学で行われたスタンフォード監獄実験も問題のある人体実験として記憶すべき歴史的実験です。 1971年心理学者フィリップジンバルドーの指導のもと、大学の地下実験室を監獄用に改造して研究が行われました。 普通の大学生を看守役と受刑者役に分けて行われた実験で、被験者の一人は発狂したことが認められています。

絶え間ない科学の研究が人類の進歩に影響を与えることは紛れもない事実です。しかしその手法については人権や倫理を十分に踏まえたものであるべきです。 MKウルトラ計画は過去の出来事ですが、その研究の手法などについては大いに反省すべきものです。人類に関する今後の研究は人権に配慮した人間らしい手法で行われることが望まれます。