1分でわかる黒い霧事件
- プロ野球の八百長事件
- 暴力団が八百長に深く関係
- オートレースでも八百長が発覚
「黒い霧事件」とはプロ野球の試合による八百長事件のことです。今から約50年前に起った事件で、西鉄ライオンズに所属していた永易将之(投手が暴力団と野球賭博をしたとして球団から解雇にされた事件です。 しかし、永易将之投手の失踪により、八百長試合を各社が報道し、事件は社会問題へと発展します。 そして、警察の捜査により永易将之投手だけにとどまらず、多くのプロ野球選手が永久追放と出場停止などの処分を受けることになります。
黒い霧事件の概要

八百長試合と思われたのですが、確かな証拠がなく、事件へと発展はしませんでした。 そんな中一人の選手が八百長試合を拒否して、プロ野球機構に連絡をしました。それをきっかけにしてある新聞が、八百長試合の証拠を掴むための調査をします。 調査により西鉄ライオンズの永易将之投手と暴力団とで公式戦で相手チームにわざと負けるように投げていた事が発覚しました。事件の概要について説明します。
当時の球界では暴力団関係の八百長が横行していた
1969年代はプロ野球の試合の勝ち負けで金銭をやり取りする野球賭博、つまり八百長試合が多くありました。当時はプロ野球試合のチケットの売り買いに暴力団が関係していたため、プロ野球と暴力団は深い関わりを持っていました。 そんな関係からプロ野球選手と暴力団が直接的な交流を持つようになり、試合でわざと負ける八百長試合を依頼されることも多くありました。その典型的な八百長試合が「黒い霧事件」です。
西鉄ライオンズの永易将之が首謀として疑われる
当時のプロ野球界は八百長試合が横行していました。特に、西鉄ライオンズは暴力団から多くの八百長試合を依頼され、その依頼をほとんど受けるといった悪質な球団でした。 しかし、暴力団から八百長試合を依頼されても、断る選手がいました。 また、依頼を断るだけではなく、プロ野球界に実態を通報する選手もいました。選手の通報により、プロ野球の試合、特に西鉄の試合は疑惑が持たれるようになります。そんな中西鉄の永易将之投手が八百長試合の中心人物として疑われることになります。
コミッショナー委員会は永易将之を永久追放にした
永易将之投手が八百長試合の中心人物として疑われたのですが、当の本人は真相を明らかにせず失踪します。失踪を続けていましたが、ある新聞記者に住んでいた場所が見つかりインタビューを受けることになります。 その結果、永易将之が八百長試合を認めます。その発言によりプロ野球界に波紋が広がり、プロ野球実行委員会を開くことになります。 そして、最終的にプロ野球界を管理統制するコミッショナー委員会は永易将之を永久追放にする結論に至ります。
巨人コーチである藤田と暴力団の関係性が露わに
永易将之を永久追放した事件の翌年に起こったのが「藤田事件」です。当時、巨人のコーチと義兄が経営する会社の代表取締役であった藤田と暴力団の関係性を疑う事件が起きました。 藤田と義兄の会社の他の役員と今後の経営の考え方、方針などの違いから対立します。意見が合わない役員を退社させるべく2人が動きました。ある知人に「30万円で退社するように説得して欲しい」と依頼をしたのです。 しかし、依頼された本人は説得はせず、相手に退社を脅迫し、藤田と義兄から受け取った30万円を着服しました。相手は警察に連絡したため、説得を依頼した人物が暴力団関係者とわかることになります。
プロ野球と暴力団の関係性が問題に。国会でも議論がなされた
永易将之を永久追放した事件、巨人コーチ藤田と暴力団の関係などプロ野球と暴力団の関係性が問題になり、国会でも議論がなされるような大きな出来事に発展します。 また、国会で永易将之が暴力団に軟禁されているのではといった意見が出たことから、真相を解明するために大阪府警、静岡県警に調査を指示すると警察庁刑事局長が答弁するような大きな事件になります。 さらに、コミッショナー委員長が参考人として国会に呼ばれる事態に発展します。
永易将之が田中勉をはじめとする他の選手の関与を認めた
当初、永易将之は八百長試合に関しては実行が真実であることを明らかにしていませんでした。つまり八百長試合に関してはノーコメントでした。しかし、警察の調べに対して自分の八百長試合への関与を認めます。 また、自分以外に八百長試合に関与していた選手は与田順欣・益田昭雄・村上公康・船田和英・基満男・田中勉と暴露します。 基・村上・船田は八百長試合を依頼されたけど断ったと八百長について語っています。
永易将之は西鉄球団から550万に及ぶ口止め料が支払われたことを告白
永易将之は自分以外の八百長試合に関与した選手を曝露したことでプロ野球界を驚かせます。また、八百長試合のことは喋らないように、西武ライオンズから口止め料として550万円ほどを貰っていたことも白状します。 さらに、八百長試合の疑惑が持たれた後に真実をを語ることなく失踪した永易将之に対して西武ライオンズから逃走資金が支給されていたことも明るみに出ます。 しかし、西武ライオンズは永易将之に支給されたとされる逃走資金に関しては認めていません。
球界の黒い霧が次々と暴かれていった
球界の黒い霧が次第に暴かれていきました。西武ライオンズの田中勉と中日ドラゴンズのエース小川健太郎、阪神タイガースの内野手である葛城隆雄がオートレースの八百長の疑惑で逮捕されます。 これを受け当時セリーグ会長だった鈴木龍二氏は中日の小川健太郎と阪神の葛城隆雄に対して無期限の出場停止処分を下します。 さらに、近鉄バファローズの球団職員が暴力団による八百長に関与した疑惑により近鉄球団と暴力団との関係までもが話題に上がるようになります。
黒い霧はオートレースにまで広がっていた
「黒い霧」事件では西鉄の永易将之投手などプロ野球選手の6人が永久追放処分を受け、八百長試合の関与が疑われた選手10人以上の処分を出しました。 また、「黒い霧」事件は前述した通りオートレースの八百長にまで広がっていきます。そのオートレースの八百長に関与した人を入れると15人ほどのプロ野球選手が処分されたことになります。 暴力団とプロ野球界の関係が明るみになり、世間は批判の声を強めていきました。
黒い霧事件で実際に処分された選手たち

「黒い霧事件」では八百長試合をした西武ライオンズのピッチャーたちが処分されました。 また、八百長試合に関わっていた選手たちの調査中にオートレースの八百長疑惑も浮上したために、疑惑が拡大していったのです。続いては実際にこの事件で処分が下った関係者や選手たちについて説明します。
西鉄球団オーナーは辞任
西武ライオンズから多くの八百長試合に関与したプロ野球選手が出たことと、西武球団自体と暴力団との関係が明るみに出たことを受け、パリーグ会長が西鉄球団のオーナーに事情聴取をします。 その結果、パリーグ会長は「西武球団が直接八百長試合に関与した証拠となるものがない」と、西武球団自体は八百長試合に関与が無かったと結論付けました。 しかし、西鉄球団から永易将之投手への口止め料や逃走資金が支給されていたとの報道があり、結果事件の責任をとって西鉄球団のオーナーは辞任します。
野球選手
「黒い霧事件」で実際に処分された選手たちとしては野球選手で10以上いました。以下で選手とその処分を表にしました。
永易将之 | 永久追放処分 |
池永正明 | 永久追放処分 |
与田順欣 | 永久追放処分 |
益田昭雄 | 永久追放処分 |
森安敏明 | 永久追放処分 |
村上公康 | 1年間の野球活動禁止 |
船田和英 | 1年間の野球活動禁止 |
オートレース選手
黒い霧事件では、プロ野球選手に加えて、オートレース選手も処分されました。以下で選手とその処分を表にしました。 黒い霧事件にはじまり、八百長疑惑がオートレースにまで及びました。結果、数人の選手が八百長に応じていた疑惑がかけられ、1人の逮捕者を出すことになりました。
広瀬登喜夫 | 無罪判決 |
戸田茂司 | 逮捕 |
黒い霧事件の後、池永などの選手の球界復帰が支援された

日本プロ野球界は「黒い霧」事件で永久追放処分を受けた選手や無期限出場停止を受けた選手をプロ野球界に復帰できるよう「 日本プロ野球協約 」の改正をします。 第177条(不正行為)には「永久失格処分を受けた者は組織内のいかなる職務にも就くことを禁止する」とあります。 この項目を、選手本人からの申請があれば日本プロフェッショナル野球機構のコミッショナーの判断次第では球界に復帰できるように、文言が追加されました。条件として永久追放から15年、また無期限出場停止から5年の経過が必要となっています。
暴力団が野球等の試合に深く関わっていた時代

「黒い霧」事件が起った時代は、野球の試合に限らず、さまざまな試合のチケットには暴力団関係者が関わっていた社会構造がありました。そんな社会構造にメスが入ったのが「黒い霧」事件だったと言えます。 「黒い霧」を教訓して暴力団関係者が関わることなく健在な野球の試合が行われることを願いたいものです。