winny事件の概要
（画像：Unsplash）
「winny事件」とは、ファイル共有ソフトの「winny」に関して、製作者が著作権法違反幇助の疑いで逮捕・起訴された後、最終的に無罪となった事件です。 「winny」はファイル共有ソフトとして有名ですが、その具体的な仕組みや製作者の金子勇氏についてはあまり知られていません。
winnyはファイル共有ソフト
「winny」とは、複数の端末間で通信するP2P技術を応用したファイル共有ソフトです。 「winny」の特徴としては、情報を収集するための中央サーバーを必要としないことが挙げられます。これにより、サーバーが稼動しなければ使えないというシステム上の障害を避けられる上、ネットワークが中断されにくいというメリットがあります。 また、通信の暗号化やクラスタ機能なども実装され、匿名性と効率性の高さが評価されていました。
winnyの製作者は金子勇氏
「winny」を製作したのは金子勇氏です。 1970年の栃木県生まれで、最終学歴は茨城大学の大学院工学研究科情報工学専攻博士課程です。「winny」を作成・公開した当時は、東京大学大学院情報理工学系研究科の特任助手を務めていました。 「winny事件」で無罪が確定した後は、企業の技術責任者、東京大学の特任講師などを務めましたが、2013年に心筋梗塞のため42際の若さで亡くなりました。
winny事件の概要と経緯
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「winny事件」では、「winny」利用者が著作権法違反の容疑で逮捕され、その後製作者である金子勇氏は著作権法違反を幇助したという疑いで逮捕されました。
winny利用者の逮捕
2003年京都府警察は、愛媛県の少年と群馬県の男性の2人の「winny」利用者を著作権法違反の疑いで逮捕しました。 愛媛県の少年はゲームソフトのデータを、群馬県の男性は映画の動画データを「winny」によって不特定多数がダウンロードできる状態にした疑いがありました。 翌年2004年少年と男性に、それぞれ執行猶予つきの有罪判決が言い渡されました。
winny製作者の逮捕
2004年逮捕された「winny」利用者の判決が出て間もなく、京都府警察は「winny」利用者の著作権違反を幇助した疑いで製作者の金子勇氏を逮捕しました。 金子勇氏自身が「winny」を通じて違法なアップロードをしたわけではありません。また、ソフトウェアを製作したこと自体についての違法性は言及されず、あくまで「winny」の公開及び提供方法について罪に問われていました。
winny事件の法律的解釈
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「winny事件」では、あくまでソフトウェアの開発行為自体を否定したのではなく、「winny」を公開・提供したことのについて問われており、多くの法律家もそれを問題にしました。 金子勇氏の弁護団は「違反の可能性を知りつつ技術を提供した者を罪に問うことは、速度違反の可能性を知りつつ高速道路を作った国土交通大臣を逮捕するのと同じだ」と反論しました。
winny事件の裁判
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「winny」の製作者である金子勇氏は2004年5月31日に起訴され、それから7年間に渡って裁判が続き、最終的には無罪を勝ち取りました。 ここでは「winny事件」における金子勇氏の裁判の経緯と結果について、一審から最終審まで具体的に説明していきます。
2004年5月31日に起訴
2004年5月31日、京都地方検察庁は「winny」の製作者金子勇氏を京都地方裁判所に起訴しました。 先に「winny」を通じた違法なアップロードで逮捕された「winny」利用者2人の著作権法違反に対する幇助が金子勇氏起訴の内容です。 その際、京都地検は「winny」そのものが違法かどうかは問わず、金子勇氏が「winny」を製作及び配布したことを著作権法違反の幇助にあたると主張しました。
2006年12月13日に一審判決
2006年7月3日金子勇氏に対して、検察が懲役1年を求刑し第一審が開始しました。第一審では双方が全面的に争い2006年9月に結審しました。 2006年12月13日京都地方裁判所は、著作権法違反を幇助したとして金子勇氏に150万の罰金を支払うよう命じました。 つまり、金子氏の敗訴ですが、検察も判決内容に不服でした。そのため、検察及び金子勇氏双方は控訴しました。
2009年10月8日に二審判決
第一審の判決が不服だった検察・金子勇氏双方は大阪高等裁判所に控訴しました。 第二審では、今度は金子勇氏が勝訴しました。2009年10月8日大阪高等裁判所は、京都地方裁判所の一審の判決を破棄し、金子勇氏を無罪としました。著作権侵害を意識して『winny」を提供したとは認められないことが判決理由です。 敗訴した大阪高等検察庁は、2009年10月21日最高裁判所に上告しました。
7年にも及ぶ裁判は2011年12月19日に無罪に
2011年12月19日最高裁判所は最高検察庁側の上告を棄却しました。つまり、7年にも及ぶ裁判の結果、金子勇氏はついに無罪を勝ち取ったのです。 最高裁の判決によれば、「winny」は「中立価値のソフト」であり、それ自体に違法性はないとのことです。「著作権法の違反目的で使われることを認めて、提供した場合は幇助に当たる」と判断し、今回はそのケースに当たらないとしました。
無罪確定後の金子勇氏
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金子勇氏は無罪を勝ち取った後、「winny」の開発に戻ることはありませんでした。 無罪確定の1年後の2012年10月に株式会社Skeedの役員に就任しましたが、1ヵ月後に退任しました。そして同年12月東京大学の特任講師に就任し、ソフトウェアの研究開発に取り組みました。 しかし2013年7月急性心筋梗塞により42歳という若さで亡くなりました。
winny事件が与えた影響
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「winny事件」は多方面で大きな影響を与えました。 この事件を通じて、「winny」のようなP2P技術が「良くないもの」というイメージが広がり、日本におけるP2Pシステムの開発を遅れさせることになりました。 しかしその一方で、P2P技術自体に違法性はないことが判例によって保証されるとともに、違法アップロードによる著作権侵害が世間に広く認知されるきっかけになりました。
まとめ
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「winny事件」は、ファイル共有ソフト「winny」の製作者金子勇氏が逮捕・起訴され、最終的に無罪となった事件です。 この事件は金子勇氏や「winny」利用者の人生だけでなく、著作権やP2P技術など多方面に大きな影響を及ぼしました。この記事を通じて、著作権法などについても改めて思いをいたしたいものです。
