1分でわかる天安門事件
天安門事件の要点
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中国政府が民主化運動を弾圧した事件
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武力行使により多くの死者が出た
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中国の民主化が困難になった
天安門事件とは？
（画像：Unsplash）
中国で起こった「天安門事件」から30年以上が経過しました。しかし、未だに事件の詳細は不明であり、様々な憶測やデマが流れている状況です。 こういった事態を引き起こしているのは中国共産党による一党独裁制が長く続き、事件のもみ消しが行われたせいです。ここで、改めて「天安門事件」の原因や概要などについて解説します。
中国の民主化を求めた国民によるデモ
「天安門事件」の発端は、中国の民主化を求める国民による大規模なデモです。中国では長く中国共産党が国家を支配していましたが、当時国民の不満が爆発寸前でした。 一党独裁制は国家の決断を早くするといったメリットはあるものの、中国共産党では一部官僚が利益や地位を独占し汚職が蔓延していたことから国民の不満が溜まっていったのです。 そのため中国国内では貧富の差が激しく民主化を求める声が日増しに強まっており、民衆が立ち上がるのは時間の問題だったといえます。
胡耀邦の死を受けて起きた
民主化を進めるにあたっては、優れた指導者もしくはカリスマ的な存在が必要です。当時の中国では胡耀邦がそれにあたります。 胡耀邦は中国共産党中央委員会総書記長の地位にありました。しかし利権に溺れることなく中国の民主化を推進する「百花斉放・百家争鳴」を唱え、国民から大きな支持を集めていました。 ところが胡耀邦は長老らの反発に遭い、総書記長の座を追われ1989年4月15日に脳梗塞により死去します。胡耀邦の死を受け学生らを中心とした追悼集会が開催され「天安門事件」へとつながっていくのです。
天安門に学生などが座り込み抗議した
胡耀邦の追悼集会は中国政法大学の学生らを中心に1989年4月16日に北京市内で行われましたが、大きな混乱にはなっていません。 ところが翌18日にはいくつもの大学が加わり1万人規模のデモへと拡大しました。さらにデモに参加した人々が天安門に集まり、座り込み抗議を始めたのです。 これに対して中国共産党保守派は、4月26日付け人民日報一面において厳しい批判を内容とする社説を掲載します。このことは民主化運動を推進する活動家らの態度を硬化させることになりました。
軍隊による鎮圧が行われた
民衆らによるデモや座り込み抗議は5月に入っても鎮静化することはありませんでした。これに業を煮やした中国共産党保守派は、改革派の反対を押し切り5月19日に戒厳令を発表します。 しかし戒厳令が発表されたことで、さらに民衆の反発は大きくなりました。そこで中国共産党保守派は、人民解放軍を天安門広場に集結させたのです。 そして李鵬首相の指示により、6月3日深夜から4日未明にかけて人民解放軍による武力行使が行われました。当初は激しく抵抗していた民衆ですが、やがて武力に圧倒されデモは鎮静化されたのです。
天安門事件の死者、被害者
（画像：Unsplash）
「天安門事件」の死者や被害者については諸説があり、その実態については明らかになっていません。それどころか、人民解放軍が発砲すらしていないといった証言者すら現れています。 これは中国政府が徹底した報道管制を行い、西側諸国のマスメディアを徹底的に排除したことに起因します。そこで、「天安門事件」の死者や被害者などその実態に迫ります。
政府は319人の死者と発表
「天安門事件」の死者について、中国政府は319人であったと発表しています。その一方で死者は数万人であったとの証言もあり実態は定かではありません。 これは中国政府が西側諸国のマスメデイアに対して、厳しい報道規制を敷いたことに原因があります。そのため、当初は生中継されていた中国国内の映像さえも回線が切断されてしまいました。 事実を知るには外国人ジャーナリストの証言に頼るしかありませんが、事件当日に天安門に近づくことは容易ではなかったため正確な情報が少ないのが実態です。
実際は1000人以上の死者がいた
「天安門事件」の死者は少なくとも1,000人以上いたとされています。これは複数の外国人ジャーナリストの証言から明かになったものです。 また「天安門事件」から数年後に公開された米外交公電においても、多くの死傷者が出てしまったことが記載されており、1,000人以上の死者がいたことを裏付けています。 外国人ジャーナリストの中には、死者が10,000人以上いたとする者もいました。しかしそれらの大半は中国共産党に反対する市民から得た情報であり、信ぴょう性は低いでしょう。
指名手配された人々や亡命した人々が多数
天安門事件においてはデモに参加した多くの人々が逮捕されており、その数は数千人にも上るといわれています。 民主化運動を推進していた王丹、ウーアルカイシ、劉剛ら21人は中国政府によって指名手配され、そのうち14人がアメリカなど各国に亡命しました。しかし、不当に逮捕された活動家約20人は現在も投獄されたままです。 一方で長年にわたって人権活動を推進し天安門事件後に投獄された劉暁波は、2010年にノーベル平和賞を受賞しており、彼らの活動が正当であったことを世界中に知らしめています。
天安門事件の無名の反逆者、「戦車男」
（画像：Unsplash）
天安門事件で戦ったのは有名な学生活動家や著名人ばかりではありません。デモ隊を鎮圧するために天安門に向かう装甲車に立ちはだかる男性が、各国に映像配信され話題になりました。 この男性の名前はウーアルカイシら中国人活動家も知らなかったため、「無名の反逆者」「戦車男」と名付けられたのです。 轢き殺される可能性があったにも関わらず、装甲車に抗議する彼の姿は中国民主化運動の象徴と報道されました。しかし、その後の「戦車男」の消息については生死さえ明らかになっていません。
中国国内で天安門事件のもみ消しが行われた
（画像：Unsplash）
中国政府は国内における民主化運動が激化することを恐れ、西側諸国のメディアを追放するなど「天安門事件」の実態を国外に知られないよう報道規制を徹底してきました。 さらに中国国内では「天安門事件」に関するキーワードで検索しようとすると回線が切断されるなど、徹底的なもみ消しが行われています。 つまり、中国政府は歴史上から「天安門事件」を排除してきたのです。そのため事件以降に生まれてきた者の中には「天安門事件」が起こったことすら知らない人も少なくありません。
民主化が国によって鎮圧された事例は中国のみ
（画像：Unsplash）
中国に限らずスーダンやアラブ諸国など様々な国で民主化運動が行われています。その過程において、激しい紛争が繰り広げられることも少なくありません。 例えばアラブ諸国では「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が2010年頃から活発化し紛争が勃発しました。中でもチュニジアは見事に民主化に成功しています。 しかし中国が他国と決定的に異なるのは、国によって民主化運動が鎮圧された点です。そのため、中国では「天安門事件」がトラウマとなり民衆が自由に発言することすら恐怖を覚えています。
天安門事件から30年。中国の独裁政治はいつまで続くのか？
（画像：Unsplash）
多くの有識者は「天安門事件」により、中国の独裁政治はいずれ破綻すると考えていました。しかし、現在も習近平国家主席の独裁政治は強化されています。 その背景には中国経済が急速に成長したことで、強大な国力を有してしまったことがあります。つまり、諸外国が中国に対して発言しにくい状況が生まれたのです。 さらに習近平国家主席の徹底した反腐敗政治対策により、貧富の差が縮まり国内の情勢が落ち着いていることもあり、当面は習近平国家主席の独裁政治は続くと予想されます。
香港デモは天安門事件の二の舞になるのか？
（画像：Unsplash）
香港におけるデモの発端は「逃亡犯条例」の改正案に反対するものです。これは、他国で犯罪を犯した者をその国に引き渡す法律です。 ここで民衆が反発しているのは改正案によって民主化を推し進める活動家らが中国に引き渡され、内政干渉が起きるのではないかといった懸念があるからです。 事態は極めて深刻ですが「天安門事件」が教訓となり、軍を率いて制裁を行うことの愚かさを香港政府は理解しています。したがって「天安門事件」の二の舞にはならないと思われます。
