下関通り魔殺人事件の事件の概要や犯人・上部康明の生い立ち、犯行動機とは？

1分でわかる下関通り魔殺人事件

下関通り魔殺人事件

車とナイフで無差別に殺傷
精神鑑定の結果は分かれたが、裁判では責任能力ありと判断
犯人は九大卒の一級建築士

「下関通り魔殺人事件」は「秋葉原通り魔事件」「名古屋市連続通り魔殺傷事件」「池袋通り魔殺人事件」などとともに、日本で起こった通り魔殺人事件の一つとして有名です。白昼の街で対象を選ばず無差別に殺傷するという通り魔事件は殺人事件の中でも特に恐ろしい事件です。「下関通り魔殺人事件」では5人死亡、10人負傷という被害が出ました。

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下関通り魔殺人事件の概要

「下関通り魔殺人事件」は車と包丁を使って無差別に一般市民を殺傷した事件です。事件は山口県のJR下関駅構内で起きました。事件はどのようにして起こったのでしょうか。

犯人である上部康明が車で駅構内に侵入し人を次々とはねた

1999年9月29日午後1時20分過ぎに犯人はJR下関駅近くのレンタカー会社で普通乗用車をレンタルしました。午後4時25分犯人の運転する車は下関駅のガラスドアをぶち破り、駅構内のコンコースに飛び込みました。走り続ける車に駅構内の歩行者がはねられ、車のボンネットに歩行者が跳ね上がりました。車は停止することなく倒れた人をも次々とひいていきました。車では最終的に7人が犠牲になりました。

ナイフで人を切りつけた

犯人は車で人をひいただけでは飽き足らず、次の行動に移します。停まった車から降りた犯人の手には刃渡り18センチの包丁が握られていました。犯人は改札を通過しホームに駆け上がりながら階段ですれ違った一人に切りつけました。さらに行き着いたホームでも逃げ惑う人々7人に無差別に切りつけました。たった数分間の出来事だったとされていますが、最終的に死者5名、重軽傷者10名という惨事が引き起こされたのです。

下関通り魔殺人事件の被害者

「下関通り魔殺人事件」では全体で5人の死亡者と10人の負傷者が出ました。車によってひかれた被害者と包丁で切りつけられた被害者です。どちらの被害者もたまたまそこに居合わせただけの人々で、本当にお気の毒としかいいようがありません。

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5名が死亡

「下関通り魔殺人事件」では5人の方が亡くなっています。事件から丸9年を迎えた2008年遺族達は事件の現場であったJR下関駅を訪れ、花を手向けて被害者の冥福を祈りました。当時既に犯人の死刑が確定しており、遺族の一人は「ようやくこの場で父に犯人の死刑確定を報告できたが、9年は長かった。遺族や被害者の心の傷が癒やされることはない。」と語っています。

10名が負傷

「下関通り魔殺人事件」では5人の死亡者の他に10人の負傷者が出ています。犯人の車にはねられたり、包丁で切りつけられたりした負傷者です。自分の人生が上手くいかないことを社会のせいにして、社会全般に対する憎悪をつのらせ、何の関係もない人々に攻撃を加える「下関通り魔殺人事件」のような事件が現実に起きていることに恐怖を感じられずにはいられません。

犯人・上部康明の生い立ち

「下関通り魔殺人事件」の犯人は「上部康明（うわべやすあき）」です。勉強熱心な高校生だったようですが、なぜ彼はこのような凶行に及ぶに至ったのでしょうか。そこには潜在的に抱えていた精神的な問題に加えて、突発的な災いの影響もあったようです。それでは事件を起こすに至った経緯を見てみましょう。

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上部康明は九州大学を卒業

上部は1964年下関市の隣町である豊浦町（豊浦町は2005年に下関市と合併）で生まれました。両親は二人とも学校の教師をしていて妹が一人いました。高校では真面目な勉強家で、トップクラスの成績だったようです。一浪はしましたが名門国立大学である九州大学工学部建築学科に進学しました。大学に入るまで熱心に勉強に励んできた上部は「大学では思いきって遊ぼう」と考えていたそうです。しかしながら上部は対人恐怖症の気があり、大学生活は上手くいかず「みんなが自分のことを嫌っているのではないか。」と思い始めました。

一級建築士であり自身で事務所を経営しその後運送会社経営も行なった

大学は卒業したものの人間関係を作るのが嫌いなため就職も上手くいかず，心配した両親は上部の神経治療を始めます。1985年には福岡の精神病院に入院しています。幾つかの職を転々とした後、上部は福岡市内の建築設計事務所に就職します。仕事をしながら一級建築士の資格を取得した上部は1992年に事務所を退社し、自身の建築設計事務所を開きます。事務所開設の翌年には結婚相談所で出会った女性と結婚します。妻も二級建築士の資格をとり夫をサポートしますが、人間関係が苦手な上部の事務所はやがて立ちゆかなくなり、事務所をたたみます。妻と別居した上部は実家に帰って軽トラックで運送業の仕事を始めました。

いずれも経営がうまくいかず自暴自棄になる

別居していた妻は新婚旅行で行ったニュージーランドに渡りました。上部は仕事をしながら妻の帰りを待ちますが、やがて帰国した妻からは離婚を迫られます。上部は一緒にニュージーランドで暮らそうと必至に説得を試みますが物別れに終わってしまいます。それでも一人でニュージーランドに移住する費用を稼ごうと仕事に取り組みますが、折からの台風で上部の軽トラックは使用不能になってしまいます。車のローンだけが残り、移住の夢も破れた上部は自暴自棄になってしまいました。その後上部は下関駅前でレンターカーを借りて駅に突っ込んでしまうのです。

下関通り魔殺人事件の裁判と判決

「下関通り魔殺人事件」の裁判においては上部の精神状態が最大の争点になりました。上部の精神状態が責任能力を問える状態だったのか否かが問題になったのです。「下関通り魔殺人事件」の少し前には「池袋通り魔殺人事件」が起きており、上部がこの事件を意識していたことも明らかになりました。

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精神鑑定が行われ妄想性パーソナリティ障害が疑われた

上部は「誰でもいいから殺してやろうと思った。」「池袋の事件ではナイフだけだったのでたくさん殺せなかったので車を使った。」などど供述しています。法廷でも上部は奇声を発したり、意味不明の発言を繰り返しました。上部の責任能力を判断するため弁護側・検察側双方の精神鑑定が行われました。精神鑑定の結果は弁護側と検察側で見解が分かれました。弁護側の精神鑑定では上部には妄想性パーソナリティ障害があり、一部の責任能力しかないとの結果でした。一方検察側の鑑定では上部には完全に責任能力があるとの結果でした。

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責任能力が認められ死刑判決が下された

2002年9月20日山口地裁は上部の責任能力を完全に認め、「史上まれにみる凶悪な犯罪。動機に斟酌すべき事情もない。」と上部に死刑を言い渡しました。弁護側は広島高裁に控訴しますが、高裁でも新たに精神鑑定が行われ、その結果一審判決が支持され控訴は棄却されました。さらに事件は最高裁に上告されましたが、2008年7月11日最高裁も被告側の上告を棄却し死刑が確定しました。

下関通り魔殺人事件の被害者には保険金が支払われた

「下関通り魔殺人事件」は被害者への賠償金に関して物議を醸（かも）した事件でもありました。被害者が殺傷された原因によって賠償金額に大きな差が出たのです。車にはねられた被害者には自動車保険によって3,000万円の賠償金が支払われました。車による被害の場合は加害者の故意によって起こされたものであっても保険金が支払われるのです。一方包丁で殺傷された被害者は犯罪被害者給付金の対象となり、こちらの上限は1,079万円で、しかも様々な制限があって実際に支払われたのは300万円程度でした。同じ事件の被害者でありながら、これだけ賠償金額に大きな差が出ることが問題化したのです。

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下関通り魔殺人事件をきっかけに犯罪被害者に対する補償制度が見直された

「下関通り魔殺人事件」による被害者の補償金に大きな差が生じたことから、同じ犯人に殺され亡くなったにも関わらず保障に差が開きすぎており、明らかに不当な扱いだと遺族達は主張しました。犯罪被害者に対する補償を定めた「犯罪被害者支援法」は1974年の三菱重工爆破事件を切っ掛けに制定されましたが、かねてから問題点が指摘されていました。この「下関通り魔殺人事件」が切っ掛けになって、2001年「犯罪被害者支援法」に関して、犯罪によって亡くなった被害者の補償範囲の拡大や賠償金の支給金額の見直しが行われました。

まとめ

「下関通り魔殺人事件」を解説しました。このような異常な精神状態に基づいた無差別殺人事件ではいつも精神鑑定が問題になります。この事件では犯人の責任能力が完全に認められましたが、そうでないケースもあります。理屈ではわかっていても、精神疾患を理由に無罪放免となる判決が出るたびに、遺族の立場になって何ともいえないやるせなさを感じる人は多いのではないでしょうか。

深川通り魔殺人事件の犯人や被害者などの詳細に迫ります！深川通り魔殺人事件は、薬物を使用していた犯人による無差別殺人です。犯人は犯行後に立て籠もったりして当時は日本中が注目していた事件です。なぜこのような殺人事件が起こってしまったのかということについて、犯人のバックグラウンドを中心に本記事では説明していきます。