世田谷一家殺人事件の現場に残された遺留品から真相に迫る。事件現場の民家取り壊しは行われるのか？

1分でわかる世田谷一家殺人事件

世田谷一家殺人事件の要点

未だ犯人確保に至らない
殺害現場に多く遺留品が残っていた
見込み捜査など捜査の仕方に疑問が残った事件

当時44歳だった会社員の世田谷区の自宅で夫をはじめ妻（当時41歳）、長女（当時8歳）、長男（当時6歳）が殺害されたのが「世田谷一家殺人事件」です。現場にはクラッシャーハット・マフラーなどやA型の血痕と多くの証拠が残るも、いまだに犯人が逮捕されていません。目を覆いたくなるような残虐な殺し方が話題となった事件です。

世田谷一家殺人事件の概要

公園近くに建つ住宅で、楽しく暮らしていた家族を残酷な手口で殺害した「世田谷一家殺人事件」の犯人の動機・目的はなんだったのでしょうか。現場に多くの遺留品がありながら警察はなぜ、犯人を逮捕することができなかったのか「世田谷一家殺人事件」の捜査方法に迫っていきます。また、「世田谷一家殺人事件」の犯行の詳細や犯人像についても解説していきます。

2000年大晦日にかけて起きた一家殺人事件

「世田谷一家殺人事件」正式名称は「上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件」です。事件は2000年の大晦日、買物から帰宅して家でくつろいでいた4名の家族に起きました。隣家に住む殺害された家主の妻の母親が家を訪ねた時には家が家荒らされており、倒れている人がいるなど異様な状況だったようです。この母の通報によって事件が発覚しました。現場に血のついた包丁、クラッシャーハット、黒色のハンカチなど犯人の物と思われる遺留品が多く残っていたので解決は早いと思われましたが、捜査は難航し現在も犯人逮捕には至っていません。

家族4名が殺害された

「世田谷一家殺人事件」では4名が殺害されました。殺害現場となったのが木々で囲まれた3階建ての住宅です。父親は応接室がある1階の階段付近で頭をはじめ無数の刺傷がある状態で見つかりました。母親と長女は母親が娘を抱えた状態で住宅の3階部分の踊り場で発見されました。長男は2階にある子供部屋の二段ベッドでジャージ姿のまま首を絞められ窒息死している状態で見つけられました。

事件現場の住所は世田谷区上祖師谷

事件現場は東京都世田谷区上祖師谷3丁目です。現場には小田急線で行けます。成城学園前駅から千歳船橋駅行きバスに乗車し、駒大グランド前のバス停から徒歩6分ほどで行けます。また京王電鉄京王線で行くことも可能です。仙川駅から千歳烏山駅を下車して徒歩だと20分ほどです。現場はパンダ公園、祖師谷公園の近くにあります。祖師谷公園にはテニスコート4面とスベリ台・ブランコ・砂場などの遊び場があり、住民の憩いの場となっています。

犯人はアイスクリームを食べるなど数々の遺留品

殺害現場には、犯人の証拠となる品物が多く残されていました。犯人は一家を殺害した後、冷蔵庫に入っていたペットボトルのお茶・メロン・アイスクリーム4個を食べています。現場の状況や聞き取り調査から犯人は犯行後、長い時間滞在したことがわかっています。またその他の遺留品として「幅が細く先がとがっている刺身包丁」「香水の匂いが付いた黒色のハンカチ」「血が付いたトレーナー」「インクが付いたヒップバッグ」「チェック柄のマフラー」などがあります。さらに現場には人が歩いて残る足の形も見つかっており、形はスニーカーで犯人が履いていたものとして、警察はメーカーなどの捜査を行いました。

世田谷一家殺人事件の犯人の特徴

現場には犯行に使用した凶器をはじめ身につけていたクラッシャーハット・マフラー・ハンカチなど多く遺留品を残した犯人とはどんな人物だったのでしょうか。また、血の付いたトレーナーを丁寧に畳んだり、犯行後に手でアイスクリーム食べたりコップを使わずお茶飲んだりして長い時間滞在した犯人の心理、性格などの犯人の特徴について解説します。

現場に残された血液

現場には殺害した時に自分の手を誤って切ってしまい止血のために使用したと思われる血の付いたバンドエイドがありました。また床にも血痕が見つかりました。血液はA型、性別は男性と判明しました。DNAの鑑定から日本人には少ない型といった見方もされました。また薬物などを使っていた反応はなく、タバコも吸わない人物であることがわかりました。さらに、残されていたヒップバッグの紐の長さから身長170㎝前後と推定されています。

指紋も数多く発見されている

殺害現場には犯人の指紋が付いた遺留品が多くありました。また部屋の中にも多くの指紋が発見されています。 1階の子供用として置いてあるパソコン、2階の居間の奥にあるキッチン、2階の一番奥にあるトイレ前の廊下、1階の玄関とは反対側にある納戸の棚の天面から1つの指紋が見つかっています。また、1階応接室兼父親の書斎として使われていた場所にあるパソコンからは2つの指紋が発見されていました。

右利きの可能性

殺害された遺体に付いている刺傷の深さ、角度、臓器のダメージなどから犯人は右手で包丁を使っていることがわかり、犯人が右利きである可能性が高いことが判明していました。しかし、右利きの可能性がわかっても犯人の絞り込みにはあまり効果ができません。右利き・左利きの割合に詳しい人によれば右利きの割合が90％以上と言われています。しかし犯人のさまざまな情報を得ることが逮捕繋がると考えれば、決して無駄な情報ではないと言われていました。

年齢は15歳から20代と警察は絞った

警察は犯人が残していったヒップバッグの販売期間や、住宅に侵入した身軽な方法などから犯人は15歳から20代と絞りました。また、ヒップバッグのベルトの長さから犯人のウエストのサイズが70㎝から75㎝と推定し、マフラーが長さ130㎝、幅30㎝であることから首が細いこともわかり、細身の痩せ型の体系であることが判明しました。また、学生が使用する蛍光ペンの蛍光剤がヒップバッグに付着していたことから学生の可能性も浮かび上がりました。

DNAから韓国人などアジア系の可能性もあるという

殺害現場に残っていた血液から、犯人が日本人か外国人なのかを知るためのDNA鑑定が行われました。そして父親を示すY染色体がアジア系男性と判明しました。アジア系男性でも日本人の可能性は少なく、韓国人の可能性が高いという結果が出ました。母親を示すX染色体は南欧系の可能性が高いこともわかっていますしかし、DNA鑑定には限界があり、断定するには至りませんでした。

凶器の巻かれた布はフィリピン北部の特殊な巻き方か？【追記】

2019年12月、凶器として使用された刃物に巻かれた布がフィリピン北部の儀式などで使われる特殊な巻き方であることが新たな事実として判明しました。この巻き方は儀式だけではなく軍人なども使用する巻き方で返り血を浴びない様にする方法の一つだということです。警視庁はこれを受け、フィリピンへ捜査官を派遣するか検討するとしています。

2019年12月14日、警察が成城学園前駅で市民に配っていた資料の一部

世田谷一家殺人事件の警察による捜査

警察は「世田谷一家殺人事件」の犯人の逮捕に向けてどのように捜査を進めていったのでしょうか。警察が捜査をする上でポイントに置いたこと、犯人が残した証拠品と捜査の関係などを解説します。

2004年にイラストを公開

犯人の遺留品やDNA鑑定で捜査を進めるも犯人の逮捕には至りませんでした。警察は事件が発生してから4年が過ぎた2004年にイラストを初めて公開しています。毛糸織りの灰色のクラッシャーハットをかぶりトレーナ姿で腰にヒップバッグ、首に赤・黒・オレンジの格子柄のマフラー、27.5㎝の韓国製のスニーカーのイラストでした。

動機は金目的としている

「世田谷一家殺人事件」の犯人は住宅にあったお金や預金通帳を奪う目的だったが、家族に騒がれたために殺害したと警察は見ていました。殺害の残酷さから単独犯ではなくアジア系の組織的犯罪との見方が上がっています。しかし、組織的犯罪であればなぜ、遺留品を多く残したのかまた、殺害の仕方がプロとは思えないと考えられていました。

スケボーをしている人物

遺留品のヒップバッグの中を調べていたら粉末状になった細かいガラスビーズ6粒ほどが見つかり、成分分析でチタン・バリウム・シリカが入っていることが判明しました。これらの成分はスケートボードの滑り止めに使われるグリップテープに含まれているからスケボーをしている人物に結びつきました。

アジア系外国人または混血日本人

DNAの鑑定で犯人は韓国・中国などアジア系と推定していました。また日本人の可能性も捨てきれず、日本人の父親とアジア系の母親を持つ混血の日本人である可能性があるとして捜査をしていたようです。捜査では、国際刑事警察機構に協力を要請、また行動を化学的に分析して犯人を絞るプロファイリングが適用されていました。

世田谷一家殺人事件の影響

普通に生活をしていた家族4名が殺され、犯人の逮捕に至ってない「世田谷一家殺人事件」を教訓にして地域はどのように変わっていったのでしょうか。警察が起こした活動を解説します。また犯人の手がかりになる情報を集めて逮捕するために地域の人たちが行った行動も合わせて解説します。

防犯意識

世田谷区成城署は「世田谷一家殺人事件」を教訓にして住民に戸締りの徹底や不審者の通報など防犯意識を高める啓発活動をしました。また、街に防犯カメラの設置、道路や公園には緊急ボタンを押すだけで警察と会話ができて、撮影映像の保存ができるスーパー防犯灯などの設置に向けた動きを加速していきました。その結果として世田谷区で起こる事件の減少と事件の早期解決に効果が出ています。

時効

2000年の事件当時の殺人事件には事件の内容により10年・15年・25年と公訴時効がありました。しかし2005年と2010年に行われた刑事訴訟法の改正により公訴時効はなくなっています。「世田谷一家殺人事件」は犯人の特徴などがわかっているにも関わらず15年経っても犯人は逮捕されていませんでした。2005年と2010年の刑事訴訟法の改正がなければ公訴時効を向えることになっていたと捜査関係者は語っています。

懸賞金

「世田谷一家殺人事件」は多くの遺留品がありながら犯人を逮捕することができず、また有力な情報を得られないことから「懸賞金」を出すことが決定しました。最初の懸賞金はトータルで1千万円でした。警察庁が300万円と地元の「世田谷一家殺人事件」に協力する有志の民間団体が700万円です。「懸賞金」を出すも犯人逮捕に至らず、また有力な情報を得られないことから最初の「懸賞金」から14年たった年に地元有志の民間団体は1700万円に増額し、トータル2千万円の「懸賞金」を出しています。

世田谷一家殺人事件の現場の今

世田谷一家殺人事件の犯行現場である民家は現在も存続しています。民家には警察官が常駐しており24時間体制で警備がなされています。民家の周りは空き地となっており公園などもできています。民家はつい先日記者向けに一般公開されたことでも話題を呼びました。

事件現場である住居の取り壊しを打診【追記】

2019年11月15日、事件現場である住居の取り壊しを警察が遺族側へ打診しました。警察は3D動画で住居内の様子を撮影し保存した為、現場の保存はこれ以上必要ないとして今回の打診に至ったようです。老朽化などが原因で台風などの際に倒壊など周囲への影響を考慮した結果となりましたが、遺族側は事件の風化が早まるとして受け入れたくないとしています。

まとめ

殺害現場にはなぜ、多くの遺留品があったのか、また単にお金を取ることが目的ではないような残酷な殺し方など疑問が残る事件でした。 DNA鑑定・プロファイリングの適用や国際刑事警察機構が協力したにも関わらず犯人の逮捕に至らなかったこの事件を教訓にしてどんな事件でも犯人が逮捕される捜査方法になることを願いたいものです。