ライブドア事件やライブドアショックの真相は？堀江貴文氏が与えた社会への影響とは？

1分でわかるライブドア事件

ライブドア事件の要点

2006年1月16日に東京地検がライブドアを強制捜査
翌17日から株価が大暴落するライブドアショック
ライブドアの取締役が証券取引法違反で逮捕

「ライブドア事件」は2006年に起こった粉飾決算事件です。それまで起こった企業の経済事件と比べると粉飾額が少なかったにも関わらず、取締役が複数逮捕され実刑判決が下される事態となりました。また「ライブドアショック」により、投資家にも大きな影響が出ています。

ライブドア事件の背景

「ライブドア事件」は2006年に起こった粉飾決算事件です。東京地検特捜部の捜査は前年の2005年から始まっていました。2005年にライブドアがニッポン放送に対して行っていた敵対的買収が決着した頃から、東京地検に様々な情報が寄せられるようになりました。それまで起こった企業の経済事件と比べると粉飾額が少なかったにも関わらず、取締役が複数逮捕され実刑判決が下される事態となりました。また「ライブドアショック」により、投資家にも大きな影響が出ました。

社内からの内部告発などが増加

ライブドアのニッポン放送買収問題が終結した2005年4月以降、企業関係者やマスコミの一部が東京地検特捜部に対し様々な情報が寄せられるようになったことは前述しました。そして秋を迎える頃には退職を迫られて納得がいかない元幹部が告発を検討したり、在職中の幹部が外部と不穏なメールをやりとりするという動きが加速したのです。こうした社員からの内部告発が増加したことで、東京地検は捜査を本格化させていきました。

政財界はライブドアの存在を恐れていた

ライブドアの当時の代表取締役社長は、堀江貴文氏でした。2000年4月に東証マザーズにオン・ザ・エッジを上場させた堀江氏は、2002年にライブドアを買収します。ライブドアにファイナンス部門を設けて業績を伸ばす一方で、近鉄バッファローズやニッポン放送の買収により知名度を上げます。そして株式分割を活用して時価総額を増やしていきます。堀江氏のそうした手法を、政財界は恐れていたのです。

ライブドア事件の概要

「ライブドア事件」は2006年1月16日に、六本木ヒルズ内の本社並びに代表取締役だった堀江貴文氏の自宅・事務所の強制捜査が行われたことから始まりました。証券取引法違反の容疑での捜査です。

ライブドアやそのグループ会社による粉飾決算

東京地方検察庁が証券取引法違反で逮捕するに至った理由に、ライブドア並びにグループ会社で粉飾決算が行われていたことがあげられます。子会社であるライブドアマーケティングが2004年第3四半期に3200万円の経常損失を出していたにも関わらず、ロイヤル信販とキューズネットで架空売り上げを計上し完全黒字化に見せかけていたというものです。同時期のライブドアの連結決算でも3億1300万円の経常赤字だったにも関わらず、架空売上を計上し50億3400万円の経常黒字として有価証券報告書に記載していました。

ライブドアやそのグループ会社による証券取引法違反

堀江容疑者は「偽計及び風説の流布」と「有価証券報告書虚偽記載」2つの容疑に問われていました。ライブドアファイナンスの企業価値を実質支配していたるマネーライフ社に過大評価をさせていたことが、偽計及び風説の流布にあたるとしました。またライブドアがクラサワコミュニケーションズの企業買収にあたり、M＆Aチャレンジャーファンドを設立してライブドアファイナンスに8億円を投資させます。 8億円分のライブドア株で自社を売却したクラサワは、M＆Aチャレンジャーファンドに現金8億円で株を売却します。そしてM＆Aチャレンジャーファンドは8億円分の株売却により18億円の利益を得ました。これは自社株売買にあたるので、株式の発行により資本が増えたと解釈できます。ライブドアはこれを「会社の増益」として有価証券報告書に記載したため、有価証券報告書虚偽記載の容疑がかけられました。

マネーロンダリングの疑いなども出ていた

「ライブドア事件」では、立件されなかった容疑も複数ありました。その一つに「マネーロンダリング」があります。これは六本木ヒルズ内にあった金融コンサルティング会社のグループ会社が保有していた電話融資の貸出債権をABS社に移します。その後2004年3月29日にABS社は、株式交換でライブドアに譲渡されるのです。金融コンサルティング会社はその後、ライブドア株を売却し45億円の利益を得ます。それをライブドアの取締役だった宮内亮二氏の依頼により、投資資金として貸します。それをスイスの投資顧問・信販会社を経由して、企業買収を目的に設ける投資事業組合への出資資金に充てたことで疑われたのでした。

ライブドア事件の裁判と判決

2006年1月23日に堀江貴文容疑者を含めた取締役が逮捕されたことで始まった「ライブドア事件」が結審したのは、5年後のことです。主犯とされた堀江容疑者は最高裁まで争いますが、第二審で結審した元取締役もいました。

宮内亮治は懲役1年2ヶ月

「ライブドア事件」では、財務担当取締役だった宮内亮治容疑者も逮捕されました。宮内容疑者は2006年3月17日に保釈され、同年5月26日に初公判に出廷します。宮内容疑者は大筋で起訴事実を認め、同年9月15日に行われた堀江貴文容疑者の後半に検察側証人として出廷し「社長の指示だった」と証言します。2007年3月22日に結審した第一審で懲役1年8カ月の実刑判決が下されましたが、即日控訴しています。しかし2008年9月12日の東京高裁での判決公判で懲役1年2カ月が課され、上告せずに刑を確定させました。

堀江貴文は懲役2年6か月

主犯とされた堀江貴文容疑者は独房に収監され、取り調べの毎日が続いたものの容疑を否認します。そして東京地方裁判所で行われた第一審でも、起訴事実を全面否認しました。しかし2007年3月16日の判決公判で、懲役2年6ヶ月が言い渡されます。堀江被告は即日控訴しますが、2008年7月25日に東京高等裁判所で控訴棄却の判決が下りました。堀江被告は即日上告しますが、2011年4月26日に最高裁判所は棄却を決定し懲役2年6ヶ月が確定しました。

当時ライブドアの担当の公認会計士に懲役1年執行猶予4年

「ライブドア事件」では、現在は解散した港陽監査法人に所属していた公認会計士・小林元被告にも実刑判決が言い渡されています。最高裁まで争われましたが2011年5月20日に上告が棄却され、懲役1年執行猶予4年の実刑判決が確定しました。監査制度や会計士に対する社会的信用を失墜させたことが、判決の理由でした。

その他の取締役にも実刑判決

「ライブドア事件」では、堀江貴文被告や宮内亮治被告以外の取締役に対しても実刑判決が下っています。熊谷史人被告が懲役1年、中村長也被告並びに岡本文人被告に懲役1年6ヶ月というものでした。これは他の企業が起こした経済事件と比べると、とても厳しい判決といえます。

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ライブドア事件の後のライブドアショック

「ライブドア事件」により引き起こされた「ライブドアショック」は、投資家には忘れられない出来事といえるでしょう。ライブドア株を購入していた個人投資家も多かったことから、社会現象にもなりました。

ライブドアなどに家宅捜索が入った際に株価が暴落

東京地検特捜部がライブドアの強制捜査に踏み切った翌日の2006年1月17日の朝から、ライブドア関連株の売り注文が大量に入りました。その結果、ストップ安の気配が濃厚になります。中でも東証マザーズ市場は時価総額の約1割をライブドア関連株が占めていたたため、株価の終値が前日より11.7％マイナスになるなど大幅に下落したのです。これをきっかけに東証に上場している銘柄の90％以上の株価が下がり、株式市場全体が暴落しました。

ライブドア株は多くの一般投資家が購入しておりバブル状態だった

当時のライブドア株は、1株数百円で購入することができました。さらに代表取締役社長である堀江貴文氏が知名度を上げ、ライブドアの業績も上がっていたことから一般投資家による株の購入が殺到しバブル状態だったのです。「ライブドアショック」の影響は、大株主だけでなく個人投資家にも派生しました。

損害賠償請求約76億円が課せられた

ライブドアショックの後、株主3340名がライブドアに対し損害賠償請求を起こしました。これは粉飾決算が発覚したことで株価下落分を、補填するよう要求したものです。第一審では下落幅は200円でしたが、第二審では550円まで引き上げられ大半がライブドアからの賠償金を受け取ります。49名のみ最高裁まで争い、満額を受け取ることはできました。裁判で課された損害賠償金は、総額で76億円にも上りました。

ライブドアは上場廃止

「ライブドアショック」の後て2006年3月13日に、東京証券取引所はライブドア関連株について証券取引等監視委員会からの告発を受けます。そして2006年4月14日に東京証券取引所は、ライブドア株並びにライブドアマーケティング株の上場を廃止しました。上場廃止とは、取引市場から株式や債券を売買対象から外すことをいいます。ライブドア事件を受けての上場廃止となり、当時大きなニュースとなりました。

ライブドア事件を受けJ-SOX法などが整備された

「ライブドア事件」が発端となった「ライブドアショック」によって、日本の株式市場は暴落しました。特に東証マザーズ市場に対して投資家が根強い不信感を持ったことから、企業の内部統制強化に目が向けられるようになりました。そして証券取引法が金融商品取引法に代わったことをきっかけに、J-SOX法などが整備されます。J-SOX法とは正確な財務会計並びに重大な欠陥を報告するだけでなく、企業内の内部統制の整備・維持・報告書の提出を義務づけるというものです。 J-SOX法に違反すると、罰金あるいは禁錮刑が処せられます。

野口英昭が沖縄で自殺

「ライブドア事件」が注目を集めた理由の一つに、ライブドアに強制捜査が入った2日後である2006年1月18日に関係者が沖縄で自殺したことがあげられます。元ライブドア社員であり野口HS証券で副社長を務めていた、野口英昭氏です。野口HS証券はライブドアのファイナンス部門と取引があり、企業買収に欠かせない存在といわれていました。警察は自殺と断定しましたが内臓が飛び出すほどの傷を腹部におっていたうえ、首の左右にも深い刺し傷があったことから他殺説が根強く残っています。

ライブドア事件の類似事件

企業による経済事件は、「ライブドア事件」だけではありません。刑罰の厳しさは「ライブドア事件」が群を抜いていますが、いくつか印象深い事件があります。ここでは日本の経済事件の中でも、「ライブドア事件」に類似したものを3つ紹介します。

オリンパス事件

「オリンパス事件」とは2011年に、マイケル・ウッドフォード社長の解任をきっかけに発覚した粉飾決算事件を指します。バブル時代に資産運用に失敗したオリンパスの経営陣は10年以上にわたり、「飛ばし」という手法で連結対象外の海外ファンドに含み損を移し替えることで損失を簿外処理していたのです。さたに企業買収でねん出した資金で、含み損の穴埋めも行っていました。オリンパスは上場廃止は免れましたが、後に刑事事件に発展しています。

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長銀事件

「長銀事件」とは旧日本長期信用銀行の旧経営陣3名が、1998年3月に粉飾決算を行ったとして逮捕された事件を指します。当時の旧日本長期信用銀行は多くの不良債権を抱えていましたが、関連するノンバンクへの処理をしませんでした。そして有価証券報告書に損失を約3100億円減らした金額を記載し、提出したのです。さらに旧日本長期信用銀行は株主に対し、約71億円の違法配当をおこなっていました。これによりメガバンクにも関わらず金融再生法の適用第一号となり、一次国有化されたのです。

長銀事件の全貌を紹介！元頭取や裁判の流れを解説します！「長銀事件」は大手銀行は潰れない（潰せない）という常識を破って破綻した、バブル崩壊後の平成不況を代表する金融事件でした。今回は、この「長銀事件」の真相に切り込みます。表面的に現れた粉飾決算事件の裏に隠れた事件の真の姿を深掘りしますので参考にしてください。

エンロン事件

「エンロン事件」とは2001年10月にアメリカで発生した、粉飾決算事件を指します。アメリカでも有数の企業だったエンロン社は特定目的会社（SPC）を利用して簿外取引を行い、決算上の利益を水増し計上していました。その事実が明るみに出たことで株価が暴落し、エンロン社は倒産を余儀なくされます。エンロン社倒産後もアメリカ企業で同様の不正会計が次々と発覚し、SOX法の制定につながりました。

エンロン事件の内容に関して詳しく解説します！エンロン事件を覚えていますか？ビジネスマンであればエンロン事件について少しは知っておきたいところです。本記事ではエンロン事件の概要でわかりやすくエンロン事件を説明します。また、エンロン事件が起こってしまったきっかけや世界の流れなども読むことができます。

今なお様々な意見があるライブドア事件

ライブドア事件と、派生して起こったライブドアショックは今なお捜査方法や判決に対し様々な意見があります。ライブドア事件並びにライブドアショックは株式市場の暴落などにより、日本に様々な影響を与えました。現在の日本政府は個人投資を奨励していますが、今後も同様の事件が起こる可能性は十分にあると言えるでしょう。