大津京ステーションプレイスの欠陥を巡る訴訟で大覚が南海辰村建設に勝訴
大津京ステーションプレイスの欠陥訴訟とは
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平成21年11月に南海辰村建設が施工した大型分譲マンション
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数多くの欠陥が発覚し、建築主である株式会社大覚は南海辰村建設を提訴
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第一審では敗れるものの、第二審で大覚が勝訴し、マンションの解体・建て直しが認められた
手抜き建設がなされた大津京ステーションプレイス
大津京ステーションプレイスで発見された数多くの欠陥は施工会社である南海辰村建設の手抜き建設が原因であったことが明らかとなり、これによってマンションの解体・建て直しに必要な費用を南海辰村建設が全て負担するという判決が下されました。 判決までの流れについて詳しく解説していきます。
デベロッパーである大覚が販売を手がけた
大津京ステーションプレイスは滋賀県大津市のJR大津京駅前に位置する大型分譲マンションです。駅からのアクセスも良好で、JR線と京阪線の2路線を利用できる好立地であることから分譲前から入居希望者が集まっていました。 販売を手掛けた株式会社大覚は昭和52年に設立した滋賀県大津市に本社を置く地元の企業で、地元住民のための快適な住まいづくりに数多くの実績を持つ企業です。 そんな大覚が建築主として大手ゼネコンの南海辰村建設に施工を依頼し、平成21年に完成したマンションが大津京ステーションプレイスでした。
住民から苦情が相次ぎ、地下の浸水などのずさんな施工が次々と発覚
多くの期待を受けて平成21年に完成した大津京ステーションプレイスでしたが、実際に居住した住民から次々に多くの苦情が発生します。 地下駐車場が漏水により水没してしまった、台風によって14階廊下の防風スクリーンが落下したなどの事故が発生し、その調査の結果いくつもの建築上の欠陥が発覚しました。 また、違法なコンクリートの使用や配水管と変電設備の近接、屋上部の過剰なコンクリート増し打ちなど、意図的な手抜き工事や工費削減などの施工も発覚しました。
大覚が南海辰村建設に対し立て直し等を求める訴訟を起こした
数多くの欠陥部分が発覚する中、大覚は施工会社の南海辰村建設に対し手直し工事を要求しました。しかしながら南海辰村建設は十分に応じることなく、建物の検査や手直しに未着手のままマンションを引き渡し大覚に建築代金の請求を行います。 大覚は手直しが完了するまでは代金は支払えないと主張するも南海辰村建設はこれを退け、「引き渡しは完了した」「建築上の瑕疵はない」「支払わないというなら裁判で争う」と主張してきました。 大覚は南海辰村建設に対し事態の解決に向けた話し合いを何度も提案しました。しかし南海辰村建設はそれに応じることなく、ついには大覚を相手取って建築請負代金請求に関する訴訟を提訴しました。
第一審では南海辰村建設の勝訴
その後大覚が行った第三者の専門家による調査によって耐震構造上の重大な欠陥が見つかりました。住民説明会によってその事実を知らされた入居者からは買い戻しの希望が殺到し、27件の合意解除が行われ買い戻し金額は総額7億円にも上りました。 住民説明会には施工会社である南海辰村建設は出席せず、その後の対応もありませんでした。重大な欠陥に対し大覚は南海辰村建設に対し反訴を提起しました。しかしながら一部の欠陥については認められたものの、第一審は南海辰村建設の勝訴で終えました。 15億円の施工代金の支払いを命ずる判決を不服とし、大覚は第二審に控訴しました。
第二審では大覚の勝訴。南海辰村建設は大覚へ合計で約18億円の支払うことに
その後も欠陥は相次いで発覚し、調査によってこれらの欠陥が施工能力の欠如ではなく、手抜き工事や工費削減を目的に材料品質を落とすなど、意図的に引き起こした結果であることが分かりました。 大阪高等裁判所の裁判官及び専門委員によって現地見分を行った際に、基礎部のコンクリート打継ぎ部における南海辰村建設の手抜き工事の実態が明らかになりました。基礎部の瑕疵を解消するには施工を全てやり直す必要性が認められ、解体・建て替えが認められました。 これによって第二審では大覚が勝訴しました。判決によって南海辰村建設は大覚に対し、解体費用として約15億円、不動産強制売買における損害として約5億円の合計約18億円の支払い命令が出されました。
南海辰村建設は判決を不服とし上告を行うも、最高裁は上告を退けた
第二審の判決を不服として南海辰村建設側は上告を行いました。 しかし最高裁判所が2020年3月3日に上告を退けました。これにより南海辰村建設は大覚へ合計で約18億円の支払いを行うことが決定しました。 南海辰村建設側は最高裁の判断に不服であることを表明していますが、司法の最高機関の判断であり従わざるを得ないと判断しています。 長年争ってきた裁判がようやく終わりを迎えました。