1分でわかる水戸事件
水戸事件
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障害者雇用に熱心だった会社で助成金の不正受給が発覚
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関連した捜査で社長が従業員に虐待・強姦していたことが判明
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加害者への判決が甘く、被害者を支援する団体で逮捕者が出た
「水戸事件」は1995年に茨城県水戸市で発覚した事件です。ある会社で障害者雇用の助成金の不正受給が明らかとなり、さらには社長が障害のある従業員を虐待、強姦していたことが判明しました。 社長は逮捕後に有罪となりましたが、量刑の軽さには疑問が出ました。被害者の支援団体の一部が判決に憤り、社長に詰め寄った際には逮捕者も出てしまいました。
水戸事件の概要
「水戸事件」は茨城県水戸市にある会社社長が、助成金の不正受給とともに、知的障害者に対する暴行・強姦を行った事件です。 事件の概要と問題の起こった会社の実情、社長が逮捕に至った経緯についてご紹介していきます。
茨城県水戸市内の会社で起きた事件
1995年10月に茨城県水戸市のダンボール加工業社長が詐欺の疑いで逮捕されました。 この社長の経営する有限会社アカス紙器には、国から障害者の雇用に対する助成金が支給されていました。ところが実際には障害者の従業員へは賃金が未払いで、助成金を着服していたことが逮捕の理由でした。 アカス紙器社長の逮捕後、捜査を進めると障害者への賃金未払いだけでなく、暴行や虐待の事実が出てきたことから事件が発覚しました。
アカス紙器は知的障害者を積極的に雇用
有限会社アカス紙器は当時としては珍しく、知的障害者を積極的に雇用している会社でした。 1990年代前後は社会の知的障害者に対する理解と認知度が低く、障害者本人が希望しても就職は困難でした。そんな中でアカス紙器は率先して障害者を雇い入れ、従業員として会社の寮にも住まわせていました。 アカス紙器は「水戸事件」が発覚するまでは、知的障害者を雇用する貴重な会社として障害者の家族らから感謝されていたそうです。
助成金の不正受給で社長が逮捕された
有限会社アカス紙器は社会福祉に貢献する会社として知られていましたが、実態は異なりました。 日本では知的障害者など、なんらかのハンデのせいで就職が困難な人を支援するため、対象の従業員を雇用する会社に対して「特定求職者雇用開発助成金」が出ることになっています。これは障害を抱えた従業員の賃金の一部を国が負担する制度です。 アカス紙器社長は障害者雇用で助成金を受け取っておきながら、障害のある従業員に賃金をほとんど支払っていなかったのです。そのため詐欺容疑でアカス紙器社長が逮捕されました。
逮捕された赤須正夫社長とは?
社長の赤須正夫(あかすまさお)はアカス紙器の創業者で、会社では主にダンボールを扱う中小規模の工場を経営していました。堅実な会社運営と社会奉仕的活動を行っていたことから、地元住民には尊敬される人物だったようです。 事件でどのようなことが行われていたのか、地元の評価と併せてご紹介していきます。
地元の名士だった
赤須正夫は障害者の雇用に熱心だったことから、社会福祉に理解のある慈善活動家として地元では有名でした。 単に労働の場を提供するだけでなく、アカス紙器は障害者従業員を会社の寮にも迎えていたことから、知的障害者の自立に貢献しているともいわれていました。 赤須正夫は地元の名士として水戸市から表彰され、身内に障害者のいる家族からは大変感謝される人物だったのです。
雇用した知的障害者への虐待もあった
慈善活動家として知られていた赤須正夫ですが、実際には世間の評価とは正反対の行為をしていました。助成金を騙し取るだけではなく、障害者従業員に対して虐待を加えていたのです。 虐待では野球バットなどで殴るといった単純な暴力から、正座した上に重しを乗せるという拷問に近いことまで行われていました。 また障害者従業員達はまともな食事を与えられず、腐敗しかけた食べ物やわざと辛味調味料をかけたものを食べさせられていたそうです。