1分でわかる廿日市女子高生殺人事件
廿日市女子高生殺人事件の要点
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廿日市女子高生殺人事件は女子高生が刺殺された事件
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未解決のまま事件発生から14年が経過した
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別件捜査の対象だった容疑者が犯人として逮捕された
廿日市(はつかいち )女子高生殺人事件は、2004年10月5日、広島県廿日市市で女子高生が刺殺された事件です。 現場に残された証拠も少なく、犯人逮捕に懸賞金がかけられるなどして必死の捜査がされましたが、犯人の特定に至らず長らく未解決のままでした。 しかし、2018年に別事件で捜査対象だった容疑者のDNAと指紋が、本事件のものと一致したことで急転直下、一気に解決に至りました。
廿日市女子高生殺人事件の概要
(画像:Unsplash)
2004年10月5日、事件は白昼の民家で起きました。高校2年生の女子高生が自宅に侵入してきた男に刺され死亡、駆け付けた祖母も刺され意識不明の重体になりました。 目撃した妹の証言をもとに犯人の似顔絵が公開され、懸賞金が用意されるも有力な情報は無く、事件発生から14年が経過します。 ところが、ひょんなことから事件は急展開し、2018年に犯人逮捕につながります。
2004年に女子高生が自宅で刃物で刺され殺害された事件
2004年10月5日の午後3時ごろ、高校2年の女子高生の被害者(当時17歳)は、自宅の離れで休んでいたところを犯人に襲われてしまいます。その日は期末試験のため下校時間は普段より早かったのです。 犯人は土足のまま被害者の部屋がある2階に上がり込み、逃げようとした被害者を1階の階段付近で殺害したとみられています。被害者の首や胸、腹には合計10か所近く刺し傷があり、犯人の凶悪性が感じられます。
女子高生の祖母も数カ所を刺される
犯行当時、自宅には女子高生のほかに小学6年生の妹と祖母がいて、女子高生の悲鳴を聞いて2人は駆けつけ、犯人の男性と鉢合わせします。 妹は走って近所に助けを求めますが、祖母は数カ所刺され、一時意識不明の重体となりました。その後、祖母は無事意識を取り戻しますが、妹も祖母も「犯人は面識のない男だった」と証言します。 現場には、犯人のスニーカーの跡と、指紋、DNAといった証拠が検出されていました。
犯人逮捕に懸賞金がかけられた
警察は妹の証言を似顔絵を作成します。証言からは、犯人は髪は茶色で短く、がっちりした体型で細い目をしており、年齢は10代後半から30歳ぐらいまでということでした。 警察は聞き込みなど必死の体制で捜査を行いますが、犯人逮捕に結びつく有力な情報を得ることができませんでした。 犯人に関する情報提供が少なくなる中、2008年には遺族が300万円を用意し、解決に結びつく重要情報の提供者に懸賞金を支払うことにしました。
犯人の手がかりが少なく逮捕までに14年間もかかった
警察は街頭で犯人の似顔絵の入ったチラシを配り、事件の情報提供を呼びかけました。投入した捜査員の数は延べ約30万人、事件発生から5,000件を超える情報が警察に寄せられましたが、犯人に結びつく手がかりはありませんでした。
「事件を解決できないのなら、刑事としての存在価値はない」
事件は広島県警最大の懸案とされ、上記のように言い残して退職していった捜査員もいました。 事件発生から14年近くが経過、年々情報提供は減っていき、もはや迷宮入りかと思われたそのとき事件は動いたのでした。
2018年に他の傷害事件で捜査中だった鹿嶋学を逮捕
事件はひょんなことから犯人逮捕へと結びつきます。2018年4月3日、山口市内の土木工事会社に勤める男性(鹿嶋学)が仕事現場で同僚の尻を蹴り、同僚が警察へ通報します。 鹿嶋学容疑者は任意で警察の取り調べを受けることになり、鹿嶋学容疑者の指紋やDNAが採取されます。なんと、その指紋とDNAの型が 廿日市市の事件現場に残されたものと一致したのです。 県警は4月13日の午前、宇部市内の鹿嶋学容疑者の自宅から任意同行を求め、逮捕へと踏み切ったのでした。
廿日市女子高生殺人事件の鹿嶋学の犯行動機
こうして、廿日市女子高生殺人事件は無事犯人逮捕となったわけですが、鹿嶋学容疑者の犯行動機には疑問が残っています。逮捕後、鹿嶋学容疑者は犯行を認めつつも動機についての供述は二転三転しており、はっきりしません。 鹿嶋学容疑者はバイクで廿日市市に入り、走っているときにたまたま被害者を発見します。そのまま後をつけて家の中に侵入、犯行に及んだということですが、目的は何だったのでしょうか。
わいせつ目的説
いくつかの動機の可能性があり、そのうちの1つがわいせつ目的説です。実際、鹿嶋学容疑者は「わいせつ目的で侵入した」という趣旨の供述したといいます。 被害者は部屋の中で仮眠をとっていたということなので、わいせつ行為に及ぼうとしたのかもしれません。しかし、被害者には着衣の乱れやわいせつ行為をされた形跡はなかったといいます。 何らかの事情で早くから当初の目的を達成できなくなったとして、その後10か所近くも刺すほどの殺意が生じるのは理解できません。
金銭目的説
鹿嶋学容疑者は「単に通りすがりにやった」という趣旨の供述もしていることから、金銭目的での犯行であるという説もあります。 ただし、室内を物色した証拠はもちろん、金銭を持ちだした形跡も残っていません。わいせつ目的説にも言えますが、鹿嶋学容疑者は目的を全く達成できていません。 にもかかわらず、証拠隠滅のために目撃者を殺害したのだとしたら、あまりにお粗末で無意味な犯行であり、被害者は不運としか言いようがありません。
単なる憂さ晴らし説
鹿嶋学容疑者は犯行当時21歳でした。精神的にも未熟で、むしゃくしゃしたことがあって憂さ晴らしのための犯行だったということは十分に考えられます。 初めから殺意を持って侵入したかは定かではありませんが、脅すためにナイフを持って侵入したのかもしれません。憂さ晴らしでもあり、レイプ目的であったことも十分考えられます。 いずれにしても動機が不明というのは、後味が悪くスッキリしない事件であることに変わりありません。鹿嶋学容疑者には真実を語ってもらいたいところです。
2020年3月20日の公判で求刑通りの無期懲役判決
2020年3月20日に広島地裁で行われた裁判員裁判で求刑通り無期懲役判決となりました。 弁護側は有期刑を求めていましたが、裁判長は「一人の命を奪い、一人に生命の危険を負わせた結果はあまりに重大」としました。
無期懲役判決に対する遺族の思い
無期懲役判決に対し被害者遺族は疑問の声を上げています。 遺族にとってかけがえのない娘を殺害されたことに変わりはなく、その悲しみから死刑を求め続けてきました。人の命の重さに優劣はありません。 しかし今回無期懲役判決が確定したことを受け、日本の司法制度が今後より公平で遺族にとって納得のいくものになるよう切に願うばかりです。