福井火葬場心中事件は「今」を反映する事件。事件の概要そして老老介護の問題に迫る。

身寄りもなく年老いた高齢者の方の多くは身体的な事情で働くことも困難で、貧しさで困窮した状況で年金だけを頼りに誰からの支援も受けることなく孤立していくことになります。 沢田定栄さんご夫婦も、近所の方々は仲の良いご夫婦としてお2人の様子を見守ってはいたものの、生活の実態までも踏み入って確認することはありませんでした。 老老介護はその孤立した環境により、壮絶な介護の心労を誰に頼ることなく全て抱え込んでしまうことが問題です。心労によって精神的に追い込まれてしまう前に、せめて助けを求めてくれればと悔やまれるケースも多いのが実態です。

年老いて働けなくなった高齢夫婦の唯一の収入源は年金だけです。頼みの年金さえも現代社会が抱える少子高齢化の問題によって今後は減少の一途をたどるのではないかと危惧されています。 年金原資を負担する現役世代は年々減少し続けているのに、受給する高齢者は年々増加しているというのが現代のわが国の実態です。 戦後のベビーブームに誕生した「団塊の世代」と呼ばれる方々が年金を受給する年齢を迎え、その負荷は今後ますます大きくなっていくと想定されます。年金の開始年齢も現在の65歳から更に後退させる法改正も検討されています。

老老介護の辛く切ない実態が現実となった福井火葬場心中事件は2016年にウチヤマユージさんによって「よろこびのうた」という題名で漫画化されました。 火葬炉で老夫婦が焼身自殺を行った部分以外はフィクションで描かれていますが、老老介護の問題や認知症の実態、児童虐待、限界集落における慢性的な人手不足や農地の耕作放棄など作中には現代社会が抱えている様々な社会問題が盛り込まれています。 出版元である講談社によると、電子書籍版のウェブ広告をきっかけにネットで大きな話題となり、読者からは多くの反響が寄せられているといわれています。

老老介護の問題と同様に高齢者が抱える社会問題として挙げられるのが「孤独死」の問題です。 独身者や配偶者に先立たれた身寄りのない高齢者が誰からの支援を受けることもなく独りで孤独に生活し、誰にも気付かれることなく死んでいくという問題です。独り暮らしの高齢者が抱える大きな社会問題として取り上げられています。 独り暮らし高齢者は増加の一途をたどっています。2017年においては高齢者人口に占める割合のうち男性16.3%、女性23.4%と平均寿命の長い女性の方が夫に先立たれといった事情により独り暮らしを迎えるケースが多くなっています。