1分でわかる元農水次官の熊沢英昭による息子の殺害
元農水次官の熊沢英昭の息子殺害事件
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元農水次官の熊沢英昭が引きこもりの息子の熊沢英一郎さんを刺殺した
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熊沢英一郎さんは家庭内暴力を行っており、熊沢英昭は身の危険を感じていた
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熊沢英一郎さんのような中高年の引きこもりは社会的に問題視されている
元農水次官の熊沢英昭による息子の殺害の概要
包丁（画像：pixaboy）
元農水次官の熊沢英昭（くまざわひであき）被告による、長男の熊沢英一郎さん殺害事件は2019年6月に発生しました。熊沢英昭被告は妻とともに熊沢英一郎さんから家庭内暴力を受けており、被害がエスカレートすることを未然に防ぐために事件を起こしたようです。
熊沢英昭の息子の熊沢英一郎さんは高校まではエリートだった
熊沢英昭被告に殺害された長男の熊沢英一郎さんは、中高一貫のエリート校である私立駒場東邦中学校・高等学校の出身です。駒場東邦中学校・高等学校は東京大学など難関大学の合格者を多数輩出する進学校です。 ところがその駒場東邦中学校・高等学校で、熊沢英一郎さんはひどいいじめに遭っていました。この時、統合失調症にかかり、元々のアスペルガー症候群と併せて苦しい思いをしたとのことです。 熊沢英一郎さんは高校卒業後に、私立大学をいくつか転々として専門学校に通ったそうです。一時は就職もして、10数年前には両親とは別居生活を始めました。
熊沢英一郎さんは引きこもりとなり「ドラクエ」などのゲームに没頭
熊沢英一郎さんはいつごろからか引きこもりがちとなり、やがてゲームに没頭していきました。 特にオンラインゲーム「ドラゴンクエスト10」ではゲーム内でも有名なプレイヤーで、いわゆる廃人と呼ばれるヘビーユーザーでした。 熊沢英一郎さんがゲームにかける月々の金額はかなり多かったようで、2018年5月に明かされたクレジットカードの支払い予定額の約32万円という金額からもそのことが窺えます。
近所の小学校に対して怒鳴ることも
熊沢英一郎さんは事件から1週間ほど前の5月25日、別居先から実家に戻りました。その後熊沢英一郎さんは両親である熊沢英昭被告とその妻に暴力を振るうようになります。 癇癪を起こした熊沢英一郎さんは「俺の人生は何なんだ」と叫んで暴れました。また事件発生当日に実家の近所の小学校であった運動会の騒音を聞き、学校がうるさいと怒鳴っていたようです。 熊沢英一郎さんの家庭内暴力は、単なる暴力からエスカレートして、ライターで火をつけようとするところまで発展しました。
熊沢英昭は息子が川崎市登戸通り魔事件のような事件を起こすことを危惧
熊沢英昭被告は逮捕後に警視庁の取り調べに対して、犯行動機の1つとして川崎市の事件を連想したことを語っています。 川崎市の事件とは、2019年5月28日に発生した「川崎市登戸通り魔事件」のことです。加害者の男が下校中の小学生児童の集団に襲いかかり、重軽傷18名と死者2名の被害が出ました。 熊沢英昭被告は、熊沢英一郎さんが運動会の音に苛立ったことから、「川崎市登戸通り魔事件」と同様の事件を起こす可能性を危惧したのです。
熊沢英昭は息子の熊沢英一郎さんを殺害
熊沢英昭被告は熊沢英一郎さんの家庭内暴力で妻と自分の命の危険を感じていました。そして同時に「川崎市登戸通り魔事件」を起こさせないために、発作的に殺害に及びました。 熊沢英昭被告の自供によると、6月1日の午後3時半ごろに包丁で熊沢英一郎さんの上半身を10数ヶ所刺して殺害したそうです。死因は失血死と見られています。 熊沢英昭被告は犯行後、自ら110番通報しました。
熊沢英昭の初公判が行われ、懲役8年求刑
法廷（画像：pixaboy）
2019年12月11日、熊沢英昭被告の初公判が東京地裁で行われました。熊沢英昭被告は熊沢英一郎さん殺害を全面的に認めてます。 この初公判では熊沢英一郎さんの希望を受け入れて、実家での3人暮らしが始まったことが明かされました。また、熊沢英一郎さんによる家庭内暴力は中学生の頃から続いていたとのことでした。 13日の公判では、検察は事件の背景を理解しつつも情状酌量の余地は少ないとして、熊沢英昭被告に対して懲役8年を求刑しました。熊沢英昭被告の妻は事件の原因が家庭内暴力にあると証言し、減刑を訴えていました。
熊沢英昭に対して懲役6年の実刑判決が下され、保釈
12月16日、東京地裁は熊沢英昭被告に懲役6年の実刑判決を下しました。執行猶予こそつきませんでしたが、検察の求刑していた懲役8年よりは減刑された形です。 その後、熊沢英昭被告は東京高裁に保釈（拘留中の被告人を釈放すること）を認められ、20日に保釈されました。熊沢英昭被告の弁護士は判決の翌日に保釈請求していましたが、東京地裁に一度却下されていました。 一般的に殺人で実刑判決を受けた被告人が保釈されることはないですが、今回のケースでは犯行の動機がかなり特殊ということや逃走の心配もないことなどから保釈が認められました。
元農水次官でエリートだった熊沢英昭の葛藤
エリート（画像：pixaboy）
熊沢英昭被告は出身が東京大学法学部という高学歴で、卒業後の1967年に農林水産省（当時は農林省）に入省しました。2001年には農林水産省の事務次官（大臣などを除く一般職の最高位）にまでなったエリートです。 そんな熊沢英昭被告ですが、長男の熊沢英一郎さんについては苦悩が付きまとったようです。
息子の熊沢英一郎さんは父親の熊沢英昭を尊敬、自慢していた
熊沢英一郎さんは中学時代から主に母親（熊沢英昭被告の妻）に家庭内暴力を振るう一方、熊沢英昭被告のことは尊敬していたようです。 熊沢英一郎さんはSNS等で熊沢英昭被告の経歴を自慢げに話したり、熊沢英昭被告の息子であることを誇る言動を見せていました。 この熊沢英昭被告の息子というプライドが、いじめや引きこもりなどで裏返しとなり、コンプレックスとなった可能性があります。家庭内暴力もそうしたコンプレックスから行っていたのかも知れません。
エリートの子は必ずしもエリートにはならない
高学歴エリートの家庭であっても、子どもが同じようにエリートにならず、それどころか非行に走るケースは珍しくありません。 受験に詳しい小林公夫さんは著書『高学歴な親はなぜ子育てに失敗するのか』で、子育てに失敗しやすいパターンを以下の2つ挙げています。小林公夫さんは前者を家系エリート、後者を頭脳エリートと分類しています。 ・代々続く名門の家が子どもに過度な期待をした結果、子ども自身の才能を無視して芽を潰す ・優秀な父母が英才教育を優先して、子どもの自主性や目的意識を蔑ろにする 熊澤英昭被告がどのような教育方針だったかは定かではありませんが、エリートの子どもが必ずしもエリートとなるとは限らないのです。
人様に迷惑をかけてはならないという考え
熊沢英一郎さんは一時期、熊沢英昭被告の義兄の勤める病院に勤務していたことがあるそうです。 熊沢英一郎さんの病院での勤務態度は悪く、ブログに上司の悪口を書き連ね、上司への傷害事件も企てたことがあります。この時の傷害事件は熊沢英昭被告の説得によって未然に防がれました。 また熊澤英昭被告の初公判では妻が、熊沢英一郎さんの関係（おそらく世間体）で長女の縁談がすべてなくなり、自殺していることを語りました。 こういったことの積み重ねから、熊沢英昭被告は世間に迷惑をかけてはいけないという風に思うようになったのでしょう。
深刻な中高年の引きこもり：8050問題
暗い部屋（画像：pixaboy）
近年注目を浴びるようになった引きこもりですが、今や現代日本の社会問題となっています。 引きこもりというと、小中高生の問題のように思えます。実際に日本では1980年代から1990年代ごろは、義務教育下の青少年がいじめを苦に不登校し始めるのが目立っていました。 ところが2010年代に改めて実際調査を行ったところ、中高年の引きこもりが60万人以上いることが判明しました。 ほとんどのケースで高齢者の親が中高年の子を扶養する形になっているため、今後は中高年の引きこもり家庭で収入や介護の問題の多発が予想されます。問題の多くが80代の親と50代の子の世帯で露呈することから、これらはまとめて「8050問題」と呼ばれています。
類似事件：開成高校生殺人事件
高校生（画像：pixaboy）
「開成高校生殺人事件」は1977年10月30日に発生した事件です。開成高等学校の生徒だった少年が、実の父親に殺害されました。 少年は中学2年生ごろまで非常に優秀な成績でしたが、中学3年生になってからは成績が落ちたそうです（哲学書に傾倒していたとも言われています）。このころから徐々に家庭内暴力を行うようになりました。 高校に入学した時期から暴力はエスカレートし、流血沙汰も起こりました。父親は家族の安全と、少年を犯罪に走らせないため、殺害に及んだと語っています。
類似事件：神奈川金属バット両親殺害事件
金属バット（画像：pixaboy）
「神奈川金属バット両親殺害事件」は1980年11月29日に発生しました。20歳の予備校生（当時）が両親を勤続バットで殴殺しました。 犯人の予備校生は、港区立青山中学校や私立海城高等学校などの進学校に通っていました。ところが高校のころから成績が落ち、早稲田大学の受験に失敗して2浪してしまいます。 予備校生は飲酒や親のキャッシュカードを無断使用してストレス発散していたようです。これを見咎めた父親から家を出て行くように言われ、予備校生は犯行に及びました。
