WHOが世界的な食糧危機の可能性を言及
1分でわかるニュースの要点
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WHO、FAO、WTOの国際3機関が危機に警鐘
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コロナの感染拡大で一部に輸出制限の動きも
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日本への影響をめぐり農水省は懸念を否定
新型コロナウイルスの拡大で輸出を制限する国
世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)、世界貿易機関(WTO)の3機関は連名で、世界的な食糧不足の懸念から輸出制限が始まれば、国際市場での食糧不足を招きかねないと警鐘を鳴らしています。 3月中旬にロシア、セルビアが小麦等の輸出制限を表明。ベトナム、カザフスタン、ウクライナ、インド、カンボジアなどが、食料輸出の制限実施や検討を表明しています。背景にあるのは新型コロナウイルスの感染拡大です。
途上国への影響は必至か
今の時点では食料在庫は充分と見られています。しかし世界各国の都市封鎖(ロックダウン)が続けば、サプライチェーンに影響を与えることは必至です。 需給の逼迫から食料相場の上昇基調が続けば、食料を輸入に依存する途上国には大きな打撃です。過度な輸出制限は、世界的な食の安全保障に影響する可能性もあります。 また途上国で栄養失調が広がれば、免疫力の低下を招きます。コロナウイルスの感染拡大のみならず、様々な感染症にかかりやすい状況を生み出しかねません。
日本への影響は?
主要先進国の中でも食料自給率が低いのが日本です。2018年度の日本の食料自給率は37%と過去最低を記録しました。新型コロナウイルスを発端とする輸出制限は、途上国のみならず日本国内においても懸念材料となっています。
農林水産省は不足しないと明言
江藤拓農相は7日の会見で
「コメや小麦も十分在庫がある。食品メーカーも生産を増やしており、食品の供給力、在庫は通常以上にある」
と表明。農水省の公式サイトでも
「食料品は十分な供給量・供給体制を確保しています」
と明言しています。 また経済産業省や消費者庁との連名で「食料品についてのお願い」を発表。
「十分な供給量を確保しているので、 安心して、落ち着いた購買行動をお願いいたします」
とのアナウンスをしています。
製造メーカーも増産体制に
国内のメーカーも増産体制に入っています。農水省は公式サイトで食品供給状況を説明する資料「⾷料品の品薄状態への対応状況」を常時アップデートしています。 「製造メーカーの対応」として即席めん、冷凍食品、パスタ、レトルト食品、パンの5品目についての増産体制を明らかにしつつ海外からの輸入に著しく影響が出ているわけではないことを発表し、不安の払拭に努めています。
どこの国も他国の心配はできず
世界の食料在庫が充分でありつつも、農産物の輸出規制を表明する国は後をたちません。サプライチェーンのリスクがあることに加え、本来リーダーシップを発揮すべきWHOが機能不全を起こしていることも影響しています。
WHOの警鐘にどの程度の効果があるかは未知数
WHOはFAO、WTOとの連名で、食糧危機への警鐘を繰り返し鳴らしています。いたずらな輸出制限の実施は控え、各国が協調すべきであるとしています。しかし罰則規定はありません。 G20の貿易大臣は前月30日に緊急テレビ会議を開き、過度の貿易制限を回避することで一致しました。しかし新型コロナウイルスの状況次第では、どこまで結束が保たれるかは不透明な状況と言えます。