77万前〜12万年前の地質時代が「チバニアン」と命名
チバニアンとは
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チバニアンが国際地質科学連合に認定
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チバニアンは77万前〜12万年前を示す地層
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地球史にチバニアンが追加
国際地質科学連合により取り決められた
地質学の国際協力機関である国際地質科学連合はこれまで空白だった新生代第四紀更新世の区分として、千葉県の地層に由来するチバニアンを認定しました。地球史の地質時代年表に日本の地名が採用されるのはこれが初となります。
最も信ぴょう性のある証拠を持つ場所の名前が用いられる
「国際標準模式地(GSSP)」とは、地球史の時代区分に照らし合わせて、地球上でその時代の特色を最も反映した地層のことをいいます。「国際標準模式地」に選定される要件はおおよそ以下の5つです。 ・「国際標準模式地」候補の地名が明確であること ・候補地の正確な位置と保全状態 ・2つの指標で年代が特定できること ・候補地選定の経緯に透明性があること ・科学雑誌等に取り上げられていること これらをクリアしたうえで国際地質科学連合などの審査を経て、時代を区分する基準に相応しい信頼性のある「国際標準模式地」として認定されます。認定後は候補地の地名に由来する時代区分が世界的に採用されます。
磁場の逆転が主な争点
チバニアンの認定で重視されたのは新生代第四紀更新世の前期と中期の間に起こった地質学上の磁場の逆転(この時代に地球磁場が南北逆転して現在の形となった)が候補地で確認できるかどうかでした。 今回候補地となっていた千葉県市原市養老渓谷の地層には磁石性鉱物が多数含まれているため磁場の逆転の証明が容易であり、時代の特定をしやすい花粉や化石といったものが発見されていたことが決め手となりました。 チバニアンの申請にあたっては茨城大学を中心とした専門家のチームが研究に取り組み、豊富かつ高精細なデータを提出していました。
日本の地名が地球史に載るのは今回が初
地球の歴史をマクロ視点でまとめた地球史では、現在までの歴史が117の時代に区分されています。 これまで有史以前を区分する地質時代(地質の変遷で分けられた年代)では77万4000年前から12万9000年前までの年代が空白となっていて、仮称として中期更新世と呼ばれていました。 チバニアンが国際地質科学連合で認定されたことにより、空白だった中期更新世が今後は正式名称として千葉時代を意味するチバニアンに書き換わっていきます。「国際標準模式地」としては世界で77ヶ所目で、地質時代の名称に日本の地名が採用されるのは今回が初めてのことです。
一部でチバニアンに反対する人々も
日本初の快挙となったチバニアンですが一部には地質時代に採用されることを反対する人もいました。チバニアン反対の急先鋒だったのが地質学者の楡井久(にれいひさし)さんです。 楡井久さんは茨城大学名誉教授で当初は茨城大学の専門家チームとともにチバニアンを推進する立場の人物でした。しかし2010年代後半からは一転して研究の不備を指摘し、反対派へと転じました。 2019年5月楡井久さんはチバニアン地層を含む土地の借地権を入手し、茨城大学専門家チーム及び他の専門家の立ち入りを不許可とする姿勢を見せていました。「国際標準模式地」認定には自由な立ち入りが要件だったことから、市原市は2019年9月に条例を改正して楡井久さんの妨害を無効としています。
イタリアの候補地に見事勝利したチバニアン
実はチバニアンとして認定された千葉県の養老渓谷の他にも中期更新世の特徴を持った地層がありました。イタリア南部にあるモンテルバーノ・イオニコ、ビィラ・デ・マルシェの2つです。 ・地層に含まれる鉱物が変質していた ・何度かの検査で磁場の逆転時期にズレが生じた イタリアの地層には花粉の化石など当時の気候を知る重要な資料的価値があったものの、時代区分の指針とするには以上2点のデータが不十分でした。逆に詳細なデータが豊富だったことから、チバニアンが認められたものと思われます。