テレワークが進まない中小企業。テレワークに必要なIT化への障壁とは？

テレワークが進まない中小企業

1分でわかるニュースの要点

テレワーク要請も出勤者7割削減は厳しい状況
中小企業はテレワークできない環境であることも
ITのノウハウやハンコ文化なども障壁に

テレワークによって出費が増える？在宅勤務による光熱費や通信費は会社が負担するのか？テレワークの導入で個人の増える在宅コストが問題視されています。光熱費などの在宅コストはその実態把握が難しく、その対応は企業に委ねられている状況です。その一方で、テレワークにより削減されたオフィスの光熱費や社員の移動費などを社員へ還元する企業も出てきています。今回はテレワーク導入による在宅コストの扱いに関して解説します。

緊急事態宣言でテレワークを要請する政府

政府は4月7日に発令した緊急事態宣言に伴い、自宅で業務を行うテレワークを実施するよう企業と従業員に呼びかけました。通勤による交通機関の利用や職場での過度な密を避け、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためです。しかし、現実的にいきなり通勤を取り止めるのは難しく、危険を感じながら出勤せざる得ない人も少なくありません。

出勤者７割削減の目標には到達せず

政府は会社への出勤者を7割削減するよう要請しましたが、4月25日現在も良い結果は聞かれません。パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、4月3～10日の7都道府県の出社率は、少なくても58.5％と6割弱を記録しています。情報漏洩の危険性から職場での対応の必要性、テレワークのための設備・人員配置の不整備、飲食や製造業はそもそもテレワーク不可等の観点から、中小企業によっては5割の削減も難しい状況です。

中小企業など従業員規模の少ない会社で進まず

従業員規模の少ない会社では、突然のテレワーク導入に対し戸惑いの声が上がっています。従業員の数が少ないと、1人抜けるだけで業務が回らなくなったり、時差出勤の対応する従業員がいなかったりするためです。従業員数に余裕がない中小企業の実態は、どのようになっているのでしょうか。

従業員数により約4倍もの差が出たテレワーク実施率

東京商工会議所が4月8日に発表した「新型コロナウイルス感染症への対応について」のテレワーク実施率は、従業員規模が300人以上の企業が57.1％に対し、従業員規模が50人未満の企業では14.4％と約4倍もの差が出ています。 50人以上300人未満でも28.2％と、300人以上と約2倍の差です。これは大企業が中小企業よりも社内体制や設備が整備されていること、中小企業にはテレワークが実施できない業務が多いことが考えられます。

時差出勤の実施率も低く

同じく東京商工会議所の調査の「時差出勤」に関するデータによると、従業員規模300人以上は時差出勤実施が83.3％と8割超えに対し、50人未満は43.9％と5割を切っています。これは普段から少ない人数の企業で、さらに時間帯ごとの人員が減ると、一人ひとりにかかる業務負担が大きくなるからだと考えられます。また製造・建設などのチームで動く現場仕事は、物理的に対応できなくなるためです。

メラビアンの法則では「3Vの法則」が重要。メラビアンの法則からみるテレワーク浸透の可否。メラビアンの法則は、「人は見た目で決まる」「会話や発表はテクニックが重要」と説いた研究ではありません。話の受け手が違和感や矛盾を感じた時に限り、「言語情報より声や態度で判断している」ことを明らかにしたものです。今日では、本来の意味と違った極論が広まっています。ビジネスシーンで活かすためには、正しい意味を理解し応用することが大切です。

IT化が進まない中小企業の課題

テレワーク実施が進まない背景には、IT化が進まない中小企業の課題が潜んでいます。資金面や考え方の違いなどから、ITが身近でない環境だったことが要因と考えられるでしょう。中小企業が抱えるIT化への課題には、どのようなものがあるのでしょうか。

IT化に必要な設備やノウハウの問題

テレワークを実施するためには、会社と自宅をつなぐネットワークの構築や、ZoomやChatWorkを始めとするITツールの運用を行わなければなりません。また、機密事項を漏らさないためのセキュリティ面の見直しも必要です。当然、これらには相応のコストがかかります。さらに運営のために管理者・従業員の双方にテレワークのノウハウがなければ、円滑に進めるのは難しくなるでしょう。

書類などのハンコ文化も要因の一つに

各地では「ハンコを押すために来た」「会社の書類で確認しなければ」との声が挙がるほど、ハンコ文化がテレワーク実施・出勤率削減の足かせとなっています。しかし、現在は政府や総務省が、積極的にハンコ文化の見直しを進めています。24日にはIT担当大臣とハンコ議連会長を兼任する竹本直一氏も「できるだけ省いたほうが良い」と、ハンコ撤廃の方向を示唆する発言を行いました。

政府が出勤の7割減を要請もハンコ文化が障壁の一つに。中小企業のテレワーク率は落ちこむ。新型コロナウイルスで全国各地で緊急事態宣言が出される中、政府はオフィス出勤者の7割の削減を企業に要請しています。この7割減を実現するためにはテレワークなどにより通勤ラッシュを削減することが効果的です。しかし、そのネックとなっているのが書面に押印する伝統的なハンコ文化です。脱ハンコ文化でテレワークは進まないのでしょうか。

テレワーク実施率は向上するのか？

設備の問題や職種ごとの仕事内容を考えると、今後急速にテレワーク実施率の向上を見込むのは難しいと考えられます。しかし、徐々ではありますが実施率は上昇を見せ、東京や大阪などの大都市圏では出勤者の減少傾向が見られました。政府もテレワークに関する助成、補助制度を打ち出しており、テレワーク導入のための環境は整いつつあるといえるでしょう。