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ナイキの厚底シューズに「制限」は必要か?東京五輪へ国際陸連の判断は?

酒井 政人

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正月の駅伝はド派手な厚底シューズが8割

(画像:Unsplash

ニューイヤー駅伝と箱根駅伝で区間新が続出するなど、正月のレースは記録ラッシュに沸いた。その〝主役〟となったのが、ナイキのド派手な厚底シューズ。『ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%』というモデルだ。

箱根駅伝では210人中177人(84.3%)が同シューズを履いて出走。10区間中7区間(2、3、4、5、6、7、10区)で区間記録が誕生した。13人が従来の区間記録を上回ったが、うちナイキの厚底シューズを着用していたのは12人だった(もう1人はミズノのプロトタイプ)。

史上稀に見る高速レースとなった箱根駅伝

総合成績でも9位までが10時間台に突入した。過去10年間で「11時間の壁」を突破したのは10チームしかない。従来であれば11時間を切れば優勝争いという状況だったが、今回はシード権争い(10位以内)とレベルが急上昇した。

学生時代に箱根駅伝を走り、スポーツライターとして20年近く、陸上競技を取材してきた筆者は正直、今回の記録に驚いている。好タイムの要因は天候に恵まれたこともあるし、学生ランナーの実力が上がったこともある。

しかし、今回の記録UPはシューズの影響が大きいと感じている。

青学大はナイキに履き替えて王座を奪回

今回の箱根駅伝で総合優勝に輝いたのが青学大だ。

大会記録を7分近くも短縮する10時間45分23秒で2年ぶり5回目の総合優勝を果たした。原晋監督の采配がズバリと的中したが、全日本大学駅伝からの〝急成長〟も話題になっている。 青学大はアディダスと「ユニフォーム契約」をしているチームだ。

選手の大半はアディダスのシューズを着用していた(昨年の箱根はナイキが1人で残りの9人はアディダスだった)。昨年11月の全日本大学駅伝は全員がナイキの厚底シューズを履いていた東海大に完敗。1分44秒差をつけられて2位に終わった。

 しかし、青学大は全日本大学駅伝にナイキの厚底シューズを〝解禁〟すると、ハーフマラソンや1万mで好タイムを連発。箱根駅伝では、10人全員がズームX ヴェイパーフライ ネクスト%で臨み、東海大から王座を取り戻したのだ。

原監督はシューズについて「ノーコメントにさせてください」と多くを語ることはなかったが、シューズの〝威力〟を実感している様子だった。

「厚底」はなぜ速いのか?

ナイキの厚底シューズはもともと2017年5月に行われた『BREAKING2』という非公認レースでマラソンの〝サブ2〟を達成する目的で作られたものだ。

反発力のあるカーボンファイバープレートを、航空宇宙産業で使う特殊素材のフォームで挟んでいるため、「厚底」になっている。 ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%の踵部分の厚さは37mm。

薄底シューズの3倍近くある。それでいて重量は28㎝で片足約190gと薄底シューズとさほど変わらない。 速さの秘密は硬質なカーボンファイバープレートにある。着地時に前足部がググッと屈曲して、もとのかたちに戻るときに、グンッと前に進む。

加えて、プレートを挟んでいる特殊フォーム(ズームXフォーム)にも最大85%のエネルギーリターンがある。そのWの効果が従来にはない「速さ」と「持久力」を実現した。

記録がどんどん塗り替えられている

世界各地のレースでナイキの厚底シューズを履いた選手たちが上位を独占。マラソンでは「記録」が大きく動いている。 日本人では2018年2月の東京で設楽悠太(Honda)が2時間6分11秒の日本記録(当時)を樹立。

同年10月のシカゴでは大迫傑(ナイキ)が設楽の記録を塗り替えて、2時間5分50秒をマークした。

2018年9月のベルリンではエリウド・キプチョゲ(ケニア)が従来の世界記録を1分18秒も短縮する2時間1分39秒という驚異的なタイムで走破。

昨年10月のシカゴではブリジット・コスゲイ(ケニア)が従来の女子世界記録を一気に1分21秒も塗り替える2時間14分04秒で駆け抜けた。

厚底に「制限」の動きか?

ナイキの厚底シューズを履いたランナーが次々と記録の壁を突き破っていることに、一部で〝疑惑の目〟が向けられている。

1月15日、複数の英国メディアが、ワールドアスレチックス(旧国際陸連)が新規則でナイキの「厚底シューズ」を禁止する可能性が高いと報じたのだ。

現在、専門家による調査が行われており、1月末にも結論を公表する予定だという。

何が規制に引っかかるのか

ワールドアスレチックスは、「使用される靴は不公平な補助、アドバンテージをもたらすものであってはならず、誰にでも比較的入手可能なものでなければならない」という規定を設けている。

ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%は30,250円(税込)と高額ではあるが、誰でも「入手可能」だ。問題は「不公平な補助」か、どうかだ。

厚底シューズの特徴であるカーボンファイバープレートは、ナイキだけでなく、他のメーカーも採用している。

それどころか短距離用のスパイクにはカーボンタイプのソールを使用しているものが少なくない。 現在の規定に抵触する可能性は低いはずだが、ナイキはどんどんソールを厚くしており、その部分にメスが入りそうだ。

「厚さは速さ」が新常識

ナイキは「厚さは速さだ」というキャッチフレーズのもと、ソールの厚さを武器にする新戦略を推し進めてきた。 現在発売中のズームX ヴェイパーフライ ネクスト%は、初代の厚底シューズであるズーム ヴェイパーフライ 4%と比べて、ミッドソールのつま先部分が4mm、かかと部分が1mm厚い。

ナイキが独自に開発したミッドソールを全体で15%増量したことで、エネルギーリターン(反発力)を高めたのだ。

昨年10月にウィーンで行われた非公認レースでは、世界記録保持者のエリウド・キプチョゲが現行モデルの上をいく「超厚底」ともいえるプロトタイプのシューズで42.195kmを1時間59分40秒という記録を打ち出した。

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