航空会社の緊急事態に国の対応は?
1分で分かるニュースの要点
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航空業界の売上は前年比で33兆円の減少
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大手航空会社の倒産も発生
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各国政府は国有化も含めて経済支援策を模索
新型コロナウイルスの影響で業績悪化が止まらない航空会社
国際航空運送協会によれば、2020年の1年間で航空会社全体の売上が33兆円減少し、前年の50%程度になると予想しています。 こうした状況下において、ANAグループは2020年3月期の業績について2019年10月時点では1400億円の営業利益を予想していましたが、4月20日の発表では600億円へと57.1%の下方修正を発表しています。また、国外でもイギリスの大手航空会社ブリティッシュエアウェイズ社は業績悪化で1万2000人を解雇しています。 このように、新型コロナウイルスによって航空会社各社は業績悪化に悩まされています。
倒産する航空会社も出始める
ヨーロッパで最大の路線数をもつイギリスのコミューター航空会社であるフライビーが3月5日に破産を申告しました。また、オーストラリアでシェア2位のヴァージン・オーストラリアが4月21日に事実上経営破綻し、大手として初めて倒産に追い込まれることになりました。 航空コンサルタント会社は、政府による支援がなければ5月末までほとんどの会社が倒産する可能性があるとレポートで報告している他、長期投資で有名な「投資の神様」ウォーレンバフェットも航空会社の株を全て売り払ったと言われています。 このように航空会社は今後連鎖的に倒産に追い込まれる可能性が危惧されています。
航空会社の国有化で救済案
業績悪化に苦しむ航空会社を経済支援策で救済するだけでなく、国有化によって救済する案も各国で広がっています。しかしながら、大手の航空会社のみを優遇する経済支援策に対して批判の声も上がっています。
自国の大手航空会社の倒産は避けたい各国
航空会社は重要な交通インフラを担っているだけでなく、数多くの労働者を抱える産業でもあります。 例えば、アメリカでは大手3社だけで30万人の従業員を抱えており、日本でもANAとJALの従業員の合計は7万人ほどになります。 このように航空会社の倒産は交通インフラへの影響だけでなく、雇用に対しても大きな影響をもつため、各国は大手航空会社の倒産を避けるための経済支援策を模索しています。
不平等な支援に一部では不満も
その一方で、アメリカの航空会社支援策をはじめ各国の支援策が大手航空会社に偏りすぎているという批判もあります。 アイルランドの格安航空会社大手のライアンエアのオレアリー最高経営責任者(CEO)は「政府は全ての航空会社を平等に扱っていない」と大手航空会社だけでなく、格安航空会社への支援の必要性を訴えています。 このように大手航空会社への救済に動く政府の対応に一部では不満もでています。
救済による国有化の現実味とは?
かつてリーマンショック時においては経営危機に陥った金融機関は国有化によって救済されています。また、イタリアでは航空会社の国有化が発表されています。このことから、航空会社の国有化による救済が他国でも行われるのかについてリーマンショック時の事例と合わせて注目が集まっています。
リーマンショックでは銀行や保険会社を国有化し救済
2008年に生じたリーマンショックでは、アメリカの大手保険会社AIGが経営危機に瀕した際に、経営破綻時に予想される影響の大きさからアメリカ政府は国有化し救済しています。また、スイス最大の金融機関であるUBSもリーマンショック時において事実上の国有化がなされ救済されています。 このように、社会的影響が大きすぎて「あまりにも大きすぎて潰せない(Too Big Too Fail)」と言われてきた金融機関は経営危機時において救済されてきた過去があります。