コロナ禍でもマンション価格は下がっていない
実際に、新型コロナウイルス感染症拡大後の住宅価格の動きを、首都圏のマンションを例にとってみてみましょう。 まず、新築マンションに関して、不動産経済研究所の調査では、図表1にあるように、2020年に入ってから平均価格はほとんど横ばいで推移しています。わが国で新型コロナウイルス感染症の拡大が本格化した3月、緊急事態宣言が発出された4月、5月も価格は安定していたのです。6月もそれは変わりません。 ただ、発売戸数は極端に減少しています。特に4月、5月は分譲会社が営業を自粛して、多くのモデルルームが休業していました。 そんななかで、分譲会社としては比較的人気が高く、集客しやすい、都心などの利便性の高いエリアの物件にシフトしたため、必然的に高額物件が中心となって、それが平均価格を押し上げている面があります。
首都圏では新築の半数近くを大手7社が分譲
この傾向はしばらくは変わらないかもしれません。分譲会社の多くは売却を急ぐことはなく、売れるところから売っていこう、多少売れ残りが出ても仕方がないと考えています。 10年前、20年前のマンション業界だとそうはいきませんでした。 たとえば、2008年のリーマンショック後には、新築マンションが売れなくなって中堅以下の分譲会社の経営状況が悪化、値引き販売や他社への一括売却などが増加、一時的に価格が暴落しました。 しかし、リーマンショック後、そうした中堅・中小の分譲会社の多くがマンション分譲から撤退、現在では、大手中心の市場になっています。 不動産経済研究所の調査では、2019年に分譲された首都圏の新築マンションのうち44%を、メジャーセブンといわれる大手7社が占めています。 全国的にみても、3分の1はやはりメジャーセブンの物件だそうです。 メジャーセブン以外でも、大手住宅メーカー系、電鉄系などの大手企業の系列会社で、経営基盤の安定した分譲会社が多くなっています。 資金的に余力のある大企業が中心ですから、多少売れなくても、ジックリ腰を据えて売れるの待つことができます。いたずらな値引きに走ることはないのです。
コロナ禍の中古マンション価格もむしろ上昇傾向
だからこそ新築マンションの価格は下がらないのです。 なかには、新型コロナウイルス感染症で市場が崩壊、マンション価格も暴落するはずだから、しばらく様子をみたほうがいいだろうと考えている人がいるかもしれませんが、それは期待はずれに終わる可能性が高いでしょう。 中古マンションについても同様です。 図表2にあるように、東日本不動産流通機構の調査によると、首都圏の中古マンション価格も下がるどころか、むしろ上がる傾向にあります。コロナ禍が深刻化した4月、5月と成約件数は大幅に減少しましたが、これは多くの仲介店舗が営業を自粛していたためであり、そのなかでもこれだけの物件がこれだけの価格で成約しているというのは、いかにマンションへのニーズが根強いかを示しているといっていいのかもしれません。 たしかに、新型コロナウイルス感染症拡大当初には、「いまのうち売っておかないと値下がりしてしまう」「売れなくなってしまうのではないか」と焦って売却に動く売主もみられましたがそれも一段落して、現在は市場も落ち着いているようです。
安値でマンション用地を仕入れている業者も
ただ、1、2年後には比較的低価格の新築マンションが増えてくるのではないかという見方もあります。どういうことなのでしょうか。 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、外国人旅行者や国内の旅行客が極端に減少したため、ホテル経営は軒並み失速、倒産するホテルが少なくないのは周知の通りです。 そのため、ホテル業者の土地買いあさりの動きがストップしています。 新型コロナウイルス感染症以前は、駅前などのマンション適地で土地が売りに出されると真っ先にホテル業者が手を挙げてマンション業者との競争になりました。 ホテル経営と分譲マンションの利益率を比較するとホテルのほうがかなり有利で、その分高値で土地を仕入れることができます。 マンション業者にいわせると、「私たちの想定した価格より2割、3割高い価格で落札されることが多くとても太刀打ちできない」という状態だったのです。 ところがここへきて、ホテル業者の入札がバッタリと途絶え、分譲会社間の競争に戻りました。 そのため、分譲会社にとっては適正な価格で入札できるようになっているというのです。