消えた年金記録問題は解決しているのか?
消えた年金記録問題は解決しているのか?
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持ち主不明の年金番号が5,000万件以上も
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原因はずさんな管理
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まだ1,800万件以上が未解決
我が国の年金管理は従来、旧社会保険庁により行われていましたが、基礎年金番号制度への統合時に持ち主がわからず統合できない年金記録が5千万件以上も残っていることが判明しました。 これが原因で社会保険庁は解体され、日本年金機構にその業務が引き継がれましたが、現在まだ1,800万件以上が未解決となっています。
2007年に起きた年金記録問題
従来の年金制度では、厚生年金、共済年金、国民年金などがそれぞれ別の番号で管理されていました。 これらの年金制度が基礎年金番号制度のもとに統合されることになったのは1997年からですが、2007年になって持ち主がわからず統合できないまま残されている年金記録がおよそ5,095万件もあるとことが明らかになりました。 この多くは人為的な入力ミスや記入漏れによって持ち主がわからなくなったもので、この事件は「消えた年金記録問題」などと呼ばれています。
未解決の年金記録も未だ存在
持ち主不明問題を解決するため、日本年金機構は年金加入者に「ねんきん特別便」や「ねんきん定期便」を送るとか「ねんきんネット」を導入するなどの方策を進めてきました。 こうした努力の結果、現在持ち主がわからない年金記録約5,095万件のうちおよそ6割に当たる約3,234万件がこれまでに解決しましたが、まだ約1,862万件が未解決となっています(平成31年3月時点)。 これらの残っている未解決の年金記録には、受給条件を満たしていないとか加入者が亡くなっている場合が多いとされています。
なぜ年金記録が消えたのか?
「消えた年金記録問題」が起きた原因については、旧社会保険庁の年金管理がずさんだったためと指摘されています。 消えた年金記録の多くは、基礎年金番号制度に統合する際に入力ミスや入力漏れなど人為的ミスにより起きたものでした。以下で詳細を見てみましょう。
基礎年金番号制度
基礎年金番号制度は、原則として20歳以上のすべての国民に公的年金への加入を義務付け、加入者一人に一つの年金番号で管理する制度です。 それまでは民間企業は厚生年金、公務員は共済年金、自営業は国民年金と異なる年金制度になっていて番号も別に付けられていました。加えて、結婚や転職をしていくつもの年金番号を保有する人もいて年金の加入件数は一時3億件以上にもなりました。 こうした状況で管理が複雑になってしまったため、1997年から基礎年金番号制度に統合されました。
ずさんな管理による人為的ミス
ずさんな年金管理を行った社会保険庁は2009年に解体されて、2010年1月から日本年金機構に業務が引き継がれました。 その後に総務省が発表した報告書では、厚生労働省も社会保険庁も年金管理に対する使命感、責任感を書いていたと指摘されています。 具体的には、基礎年金番号制度に統合する作業の中で氏名を間違えて入力したり年金番号を入力し忘れたりするなどの人為的ミスが起き、年金番号が記載されていない年金記録は一千万件以上もありました。
消えた年金を取り戻すには?
消えた年金を取り戻すにはどうしたらよいでしょうか。まず、ねんきん定期便やねんきんネットなどで加入履歴などの記録漏れがないかどうかを確認し、記録漏れをみつけた場合は年金記録訂正請求書により日本年金機構に訂正を請求します。 その際に当時の給与明細など年金加入を証明するものが必要ですが、それがない場合、請求書の自由記述欄に当時働いていた企業の代表や同僚、上司など覚えていることを詳細に記入します。 勤務していたことを証言してくれる人が見つかるなどして記録訂正に繋がれば、年金は戻ってきます。
現在の年金確認システム
年金加入者が自分の年金情報を確認するしたい場合の方法として、インターネットで確認できるねんきんネットと、保険料納付の実績をはがきなどで知らせてくれるねんきん定期便があります。 以下で詳細を見てみましょう。
ねんきんネット
ねんきんネットは自分の年金に関する情報をオンライン上で確認することができるサービスです。 自分の支払ってきた年金の記録や現時点での将来受給可能な月々の年金の額などを確認することができます。 使い方は簡単で基礎年金番号を持っており、1986年4月以前に年金受給権が発生した老齢年金受給者以外の人でねんきんネットに登録した人であれば誰でも使用することができます。
ねんきん定期便
ねんきん定期便は、保険料納付の実績や将来の年金給付に関する情報を郵送によりわかりやすく加入者に知らせるためのものです。 その目的は、現役世代、中でも若い世代に年金給付と保険料負担の関係を知ってもらい、年金制度に対する理解を深めようというものです。 ねんきん定期便は毎年、誕生月に通常ははがきで直近1年間の情報を知らせるとともに、35歳、45歳、59歳という節目の年には封書で全期間の年金記録情報が送付されます。
不安であるなら確認を
年金記録に記載漏れがあるのではないかという不安のある年金加入者は、ねんきんネットにアクセスし「持ち主不明記録」を検索すれば確認できます。ねんきんネットの利用にはメールアドレス、ログインパスワードなどの登録が必要になります。 パソコンを使用しない人は、年金事務所または街角の年金相談センターに連絡して調査してもらうことができます。 消えた年金は時効が停止されているため、いつでも記録訂正さえできれば未支給分を一括で受け取ることができます。