1分でわかる感動ポルノ
感動ポルノとは
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2012年にステラ・ヤング氏が「感動ポルノ」という言葉を始めて使う
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2016年に「バリバラ~障害者情報バラエティー~」が「24時間テレビ」を批判
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「感動ポルノ」批判についても、賛否が分かれている
感動ポルノとは
(画像:Unsplash)
「感動ポルノ」という言葉を初めて使ったのは、オーストラリア在住のコメディアン兼ジャーナリストであるステラ・ヤング氏です。2012年に「Ramp Up」という、オーストラリア放送協会のウェブマガジンで使われました。そして、その言葉は日本でも知られるようになっています。 ここでは「感動ポルノ」の定義と、その受け止められ方について説明します。
メディアが障害者が努力する姿を映し、感動を煽ること
現在の日本においては障害に負けずに前向きに努力する姿を映し、感動を煽ることという意味で使われています。「感動ポルノ」は健常者から障害者となった経緯や思い・被る負担などを紹介するわけではなく、ただ感動を強いるような内容を「ポルノ」だと揶揄しています。 障害者を総じて「感動の対象」として加工し、特別扱いしようとするメディアの姿勢が批判され、この言葉が使われています。 「視聴率を稼ぐために障害者を一面的な方法でしか取り上げていない」「感動コンテンツとして消費の対象となっている」という声もあがっています。
別名「感動の押し売り」「感動ハラスメント」
「感動ポルノ」は、「感動の押し売り」「感動ハラスメント」とも呼ばれています。「ハラスメント」とは、人を困らせることあるいは嫌がらせと定義されています。つまり、誰かを不快にさせている可能性があることから「感動ハラスメント」と呼ばれるわけです。 「感動ポルノ」では、障害者が困難を乗り越えて努力する姿がクローズアップされます。特筆すべきは、この言葉が障害者側からも発されていることです。本人たちは健常者と同じように自分なりの生活しているにもかかわらず、人生が加工され感動を強いる立場に仕立てられているからです。
感動ポルノは障害者人権活動家のステラ・ヤングによりTEDで提唱された
「感動ポルノ」は障害者人権活動家のステラ・ヤング氏が、2012年開催の「TED」と呼ばれる世界的講演会で提唱した言葉です。 ヤング氏はこの時「障害者をモノ扱いし健常者が感動するあるいはやる気を起こすために利用すること」を、「感情ポルノ」と定義しました。そして「感情ポルノ」で紹介される人の体花が身体障害者であり、精神や発達に障害がある人の登場機会が少ないことも指摘しています。
感動ポルノの批判に対して疑問を抱く人々もいる
日本では2016年8月以降、「感情ポルノ」を公然と批判する人が増えているようです。しかし一方には、「感情ポルノ」への批判に対し疑問を抱く人もいます。 ヤング氏は「感情ポルノ」について、障害者が特別視されることなく真の成果で評価される世界を望むうえで問題だと発言しました。この説に共感する人と、「真の成果で評価されるようになれば障害者の努力が過小評価される」と懸念する人の両方がいます。 そして、どちらが絶対的に正しいという判断はできないのです。
感動ポルノの具体例:24時間テレビ
(画像:Unsplash)
日本で「感動ポルノ」について議論される際に引き合いに出されるのが、毎年日本テレビが放映している「24時間テレビ」です。なぜなら、放映する企画には、障害者を起用して感動を呼ぼうとする意図が見えるものが多いからです。 ここでは「24時間テレビ」について、「感動ポルノ」の観点から説明します。
24時間テレビ
「24時間テレビ」は毎年、チャリティー募金を集めることを目的に8月下旬の土曜夜から日曜夜にかけて生放送されている番組です。その企画の中に子供を中心とした障害者やその家族が、難易度の高いチャレンジを行うものが多く含まれています。 健常者であれば「感動した」「励まされた」と思えるシーンでも、実際に障害を持つ人から見ると「障害者がモノ扱いされている」と感じるケースがあることが予想されます。 そのため、「24時間テレビは感情ポルノである」という議論が起こるのでしょう。