IBMで再雇用された社員が提訴
日本IBMにおける再雇用者提訴問題とは
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日本IBMの再雇用契約社員が同社を提訴
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正社員との著しい雇用条件差に損害賠償を要求
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コロナショックは今後の雇用情勢にも影響か
再雇用前後の賃金低下について提訴
日本IBMを定年退職しシニア契約社員となった2名が労働契約法違反で同社を提訴しました。労働契約法20条は正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差別を禁止しており、同社の取り扱いはこれに抵触するとして、損害賠償を求めています。 なお2020年4月からは働き方改革の一環として同一労働同一賃金が施行されます。これまでの労働契約法等を拡大し待遇差の基準等をより明確化しており、両名はこの新たな制度に関して4月以降分を追加請求するとしています。
事実上の定年切りと主張
提訴に踏み切った2人は現役社員当時約1,000万円の年収を得ていました。それがシニア契約社員となってからは月額17万円・ボーナスなしで年収は約200万円となり、年収が約8割減少してしまいました。 業務の内容や課される義務はシニア契約社員となっても現役時代とほとんど変わらないことから、IBMで定年後に契約社員を希望する社員はほとんどおらず、2人はこれでは事実上の定年切りではないかとIBMを強く非難しています。
定年後再雇用は会社の温情なのか?
我が国では多くの企業に定年後再雇用制度があります。でも定年後再雇用制度の現実は意外と知られていないと考えられます。会社が定年後再雇用制度を運用している真の狙いはどこにあるのでしょうか。
定年前と同じ賃金は少なく
一つ重要なポイントがあります。現在正社員には65歳までの雇用が義務づけられていますが、実態は60歳定年は変わっておらず、それ以降は再雇用制度に基づいた契約社員になるのが一般的です。 60歳を過ぎると雇用条件が大きく変わってきます。契約社員は契約期間が定められた有期契約になりますが、その期間は1年が最も多いのが実態です。業務内容や課される義務は正社員の時とほとんど変わりませんが、賃金は大きく減少し半分以下になることも決して珍しくありません。
企業にとってはメリットが大きい
大半の企業が再雇用制度を設けているのは企業にとって再雇用制度はメリットが大きいからです。再雇用される契約社員はベテラン社員です。新たに社員を雇って再教育する必要はありません。即戦力として直ぐ現場に投入できます。彼らには長年培った多くの人脈やノウハウもあります。 これが正社員時の半分以下の年収で活用できるのですから企業にとってはおいしいことこの上もありません。しかも短期の有期契約ですから企業の都合でいつでも切ることが可能です。
コロナショックは定年後再雇用にどう影響する?
コロナショックは世界経済に甚大な影響をもたらすと考えられます。既に世界中の多くの分野で影響が顕在化しており、株価も世界同時株安の状態に陥っています。企業の景況が悪化すれば雇用環境に大きな影響が出ることは避けられません。コロナショックは定年後再雇用などにどのように影響するのでしょうか。
再雇用ができない会社が出てくる可能性
企業の業績が悪化し仕事が減少したり無くなれば、企業は現在の雇用を維持するのが困難になります。ましてや新たに契約社員を再雇用する余裕はなくなると考えられます。 いくら政府に1億総活躍などと旗を振られても、不必要な人員を抱えておける余裕がある企業は希です。定年後に現在の企業に残って契約社員として余生を過ごそうと考えているシニアは今一度現実を直視する必要があります。
賃金の安さを逆手に取り新卒採用から再雇用に切り替える可能性も
逆に再雇用社員の賃金の安さに光明を見いだす企業が出てくる可能性も否定できません。面倒な新規採用・社員教育を避け、再雇用社員を増やそうと考えるかもしれません。 歴史を見ても明らかなように、大きな疫病が世界を襲った後には社会のパラダイムシフトが起こりえます。これまで当たり前だったことが最早当たり前でなくなる可能性があります。雇用もしかりで、全く新しい雇用システムが生まれる可能性もあります。