大学入試改革に対して批判が殺到。ベネッセや大学生採点者の介入の問題は？

まずは試験の公平性が損なわれるという指摘です。記述式の問題には一定の採点基準があるわけですが、その基準を満たしているかどうかは採点官の判断に委ねられます。 つまり、同じような内容の解答がされていても、採点官によって点数が異なる可能性もあるということになります。採点官は当然複数おり、採点する者の能力も異なるわけで、客観的に公平な採点を行うなどおよそ不可能でしょう。 もちろん、採点を複数人で行うことでより平準化された採点を行うことは可能かもしれません。ただし、その分人も必要になりますし、短期間でそのような質の高い採点を行うことができるかどうかは問題です。

次は試験管理に伴う不正の恐れが挙げられます。民間企業が介入すると、委託を受けた民間企業の受験塾がそれを宣伝に利用して、受験生集めを行う恐れがあります。 単に宣伝に使うだけでなく、試験問題がその受験塾に漏洩されてしまうともはや試験の公平性が保たれません。そうでなくても、その受験塾に通うのがセンター試験上有利になるのではないかとの錯覚も生じさせます。 いずれにしても民間企業を介入させることにより、不正な利益を特定の業者に生じさせることになるのは大きな問題です。

民間企業が採点を行うとして、実際には誰が行うかが問題です。50万人の記述式問題を1人が50枚採点するとすれば全体で1万人もの採点官が必要になります。 当初、文部科学省はプロの採点者や大学院生でまかなうと説明していましたが、大学生のアルバイトも採用可能と方針を転換したようで、これについては多くの反対意見が起こりました。 採点には経験や技術が必要であり、大学生のアルバイトで公平な採点ができるのかという疑問です。受験生も人生をかけて必死に勉強している人もいます。それに応える体制を整える必要性があるでしょう。

今回の大学入試改革は、政権を奪取したばかりの自民党政権下で組織された教育再生実行会議が2013年にまとめた提言がベースになっているとされています。 センター試験をやめ、年間複数回「達成度テスト」を実施すべきとのことです。1点刻みでなく、段階別の結果を出すように、また外部検定試験の活用やコンピュータの使用も視野に入れると提言されました。 つまり、大学入試で現行の一発勝負型のペーパーテストは減り、在学中における取組みが評価されることになります。これはこれで一つの重要な視点だと考えられますが、改革の手法が拙速であったと言わざるを得ないでしょう。