ANAの客室乗務員らが医療用防護服の縫製を支援へ
1分でわかるニュースの要点
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ANAグループが不足する医療用品の製造支援を検討
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ネットでは客室乗務員にやらせることを時代錯誤と批判
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支援を表明する企業は海外でも出ている
ANAグループが支援を表明
ANAグループは9日、余剰人員を有効活用して医療用防護服の縫製支援案を検討していることを明かしました。この検討の背景には、新型コロナウイルスの影響で運休が相次いだことで、客室乗務員や空港職員およそ6400名に対して一時帰休(自宅待機)させているANAの事情があります。 新型コロナウイルスの感染拡大で、医療用品が全体的に不足していることを受け、ANAはこうしたグループ会社の余剰人員を導入して支援できないかと考えたようです。
政府が航空会社に支援を要請
世界で猛威をふるう新型コロナウイルスは、日本でも連日のように感染者を増やし続けています。医療現場では機材の不足が深刻化しつつありますが、医療品メーカーの製造が追いついていません。 梶山弘志経産相と加藤勝信厚生労働相は4月7日、そうした状況を改善すべく、経団連会長らとの会談で異業種への医療機材生産支援を要請しました。
ネット上では女性の多い客室乗務員が支援することに批判も
不足しがちな製造現場へ余剰人員を回すことは良い案ですが、その一方でネット上では批判の声も出ています。医療用防護服の縫製には専門スキルが必要なので、戦時徴用のようなやり方は時代錯誤だという批判です。
具体的に誰が縫製を行うかは決まっておらず
ANAの発表は支援の決定を伝えるものではなく、あくまでも調整中の検討案を表明したものでした。ANA広報によると、支援に回す員数や具体的な作業内容については、まだ詳細を詰めている段階とのことです。 防護服の製造は通常の服飾品とは異なります。医療用防護服を作る東レは、防護服の縫製には縫い目から不純物が混入しないよう、特殊な技術や機材が必要なことを明かしています。ANAの支援で、こういった特殊技術が必要なことを考慮されているのかは不明です。
客室乗務員が行う申し出をした報道が先行したか
ネット上で主に問題視されているのは、女性の多い客室乗務員が縫製を担当することです。女性差別や戦中徴用を想起させるため、時代錯誤な案と批判されています。 実はこの支援案はANAの発表に先立って、客室乗務員ら自身が申し出ました。このことは7日の安倍晋三首相の会見や、8日の西村康稔経済再生相がテレビ出演で明かしています。こちらの報道が先行した結果、ネット上の批判が起きたようです。
航空業界への要請は世界でも
現在はANAと同様に、世界中の航空会社が航空需要の減少から運休を実施している状態です。また世界的に医療関係の人的物的不足も続いています。イギリスでは航空会社に対して経済支援を行うと同時に、医療現場への支援を要請しています。
人手不足が顕著な医療体制
新型コロナウイルスのパンデミック(爆発的流行)は、世界中で深刻な医療現場の人手不足、医療機材不足を引き起こしました。イタリアは病院の患者受け入れ可能人数が超過し、医師の感染も相次ぐなど医療崩壊に陥っています。 そうした状況を受けて、各国はすでに引退した医療従事者に対し、現場復帰を求めています。イギリスでは引退者2万人が現場に復帰し、アイルランドでは医師免許を持つバラッカー首相が自ら医療支援に乗り出しました。