台湾の旅券から”CHINA”を除くことを検討
1分でわかるニュースの要点
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”CHINA”削除の声は中国人差別がきっかけ
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台湾と中国、過去の歴史からの複雑な関係
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コロナ封じ込め成功の台湾、WHO加盟可否は?
中国人と判断されないことが目的
パスポートの修正を求める声の多くは「海外で中国人と間違われたくない」というものです。台湾パスポートの表紙を見ると、「中華民国」という漢字表記と”REPUBLIC OF CHINA”および”TAIWAN”の英文表記があります。 ”TAIWAN”の文字は「中国人と誤解されて困る」との背景から2003年に追加されたもの。しかし”CHINA”という表記ゆえに、中国人と誤解されるケースが続いているようです。
世界的に中国人に対する差別が横行
「中国人と間違われたくない」という主張は、コロナ問題による中国人差別が影響しています。飲食店の入店を拒否されたり、侮辱的な発言や暴言を浴びせかけられた等の報道もあります。 台湾の野党系シンクタンクが3月に行った世論調査では、パスポートから”CHINA”の文字を削除すべしとの意見を支持する人は74.3%に及びます。また複数の立法委員(国会議員に相当)や地方自治体の首長などからも削除を支持する声が上がっています。
元より関係が良くない台湾と中国
台湾と中国との複雑な関係は今に始まったことではありません。中華民国は1942年に内戦で分裂しました。毛沢東が率いる共産党は中華人民共和国を宣言します。一方、蒋介石が率いる国民党は台湾に逃れます。これが2つの国の複雑な環境の原点です。
WHOは台湾のオブザーバー参加を認めず
「一つの中国」という原則を政策とする中国は、台湾の独立を認めていません。また国際機関から台湾を排除する姿勢を貫いています。新型コロナウイルスの蔓延で世界の連帯が求められる中、中国は台湾のWHO(世界保健機関)加盟も認めていません。 WHOの年次総会へのオブザーバー参加は2016年まで認められていました。しかし台湾新政権が掲げる対中政策に中国が反発。台湾のオブザーバー出席が拒否される事態が続いています。蔡英文総統は「政治的要因で台湾を排除しないでほしい」と述べています。
封じこめに成功した台湾
台湾のWHO参加を後押しする声は、世界各国から出ています。「コロナウイルスの封じ込めに成功した国」とのイメージが世界に広がってきたためです。 中国からの渡航制限、マスク輸出の禁止、入国者の隔離帰省など、コロナ問題の早期から台湾は厳しい政策をとってきました。4月9日現在、台湾のコロナ感染者数は380人、死亡者数はわずか5人にとどまっています。
アメリカは参加を認めるも中国の意向で参加ができず
3月26日、アメリカで「台湾外交支援法(台北法案)」が成立しました。台湾の地位向上を支援する内容で、「国際機関への参加を促すこと」も法案に含まれています。 WHOは台湾の加盟問題について明言を避けています。中国は3月に入ってから台湾のオブザーバー参加に前向きな姿勢を見せ始めています。しかし法案には「強い不満と断固反対」を表明しています。
溝が深まる両国とWHOと関係は改善されるか
アメリカのトランプ大統領は7日、WHOへの拠出金を停止する検討を行うと発表しました。アメリカは世界最大の拠出国です。一方の中国はWHOへの拠出額を年々上げており、2020年に世界2位となりました。中国の発言権は今後も増す可能性があります。 一方の台湾は9日、テドロス事務局長の台湾招聘を目指す考えを示しました。オブザーバー参加を求めながら、WHOとの関わりを深めようとしています。コロナ対策での世界的協力が求められる中、関係各国が政治的立場や利害をどう乗り越えていけるかが問われています。