黒人男性の死亡による米デモが過激化。アメリカ社会の根深い人種差別問題とは？

アメリカでデモが過激化

１分で分かるニュースの要点

白人警官による黒人殺害を契機に全米でデモが活発化
背景にはアメリカに根強く残る黒人差別意識が
トランプ大統領の発言が火に油を注ぐ結果に

香港デモの行く末は。デモの原因や理由を踏まえ現状をわかりやすく解説。2018年に台湾へ旅行中の香港人カップルの男が、相手の女性を殺害したことで始まります。男は香港で逮捕されますが、「逃亡犯条例」が適用され事件の起きた台湾に引き渡すことが出来ませんでした。そこで、香港は逃亡犯条例を改正しようとしますが、香港の「一国二制度」が揺らぐとして香港の反対派がデモ活動を始めました。

黒人男性が白人警察官に取り押さえられ死亡した事件がきっかけに

米中西部ミネソタ州ミネアポリス近郊で黒人男性ジョージ・フロイト氏が偽札使用容疑で路上での取り調べを受けている際に、首元を膝で押さえつけられ死亡するという事件が発生しました。フロイト氏が「息ができない」と訴えかけているにもかかわらず、警察官が意に介さず抑え続けている動画が拡散されたことをきっかけに、黒人差別であるとしてミネアポリスでは大規模な暴動に発展しました。

アメリカ各地でデモが活性化

このミネアポリスで端を発した暴動がアメリカ各地にも飛び火しています。フィラデルフィアでは暴徒化した市民が警察車両や政府庁舎が襲撃の対象となっただけでなく、日用品店などへの略奪行為を働き、金融街として知られるニューヨークでもデモ行為によって550人以上が逮捕される事態にまで発展しています。こうしたデモ行為が少なくとも75都市以上に広がっているとされ、アメリカに横たわる人種差別の根が深いことが伺い知れます。

アメリカに根付く人種差別

全米にデモ活動が広がっている背景にはアメリカに根付いている黒人への差別意識があります。これまでアメリカでは黒人の地位向上のために黒人差別につながる制度を撤廃してきた歴史があります。しかしながら、制度を撤廃することはできても、白人警官による黒人への過剰な取り調べ行為など黒人への差別意識は現代にも残り続けています。

黒人が差別されてきたアメリカの歴史

アメリカの歴史において黒人は長期にわたって差別を受けており、それが現在にまで続いています。 19世紀の前半までは黒人は単なる労働力としか見なされず、人として扱われてきませんでした。19世紀後半になるとリンカーンによる黒人奴隷解放を掲げ、南北戦争を制したことによって憲法改正が行われ、奴隷制を廃止し、黒人にも市民権が与えられるようになりました。しかしながら、社会的な差別から守られることはなく、現在においても黒人のような名前で求人に応募を出すと企業から連絡を受ける確率が低下するなど、黒人差別は根強く残り続けています。

ブラックパンサー党とは黒人解放を目的とする団体。人種差別撤廃運動の実態とは？かつてアメリカに「ブラックパンサー党」という政治活動をする団体がありました。日本人には実感が薄い人種差別撤廃運動ですが、人種問題は忘れてはいけない人類共通の課題です。今回はこの「ブラックパンサー党」をとりあげます。これが生まれた背景や結末まで迫ります。

過去にも白人警官と黒人の間で問題が

こうした黒人差別の象徴として社会的な問題となっているのが白人警官による黒人への暴行です。 1991年にも黒人のロドニー・キングが交通違反の取り調べの際に、白人警官20人から暴行を受け、重傷を負いました。しかしながら、この白人警官らがロドニー・キングを暴行している場面が市民によって撮影されていたにもかかわらず、無罪判決を受けたことから、大規模な暴動へと発展したこともあります。このように、アメリカでは白人警官による黒人差別ともとれる行動がこれまでもたびたび社会問題となってきました。

トランプ大統領のツイートも影響

こうしたアメリカに根強く残る黒人差別に対して、トランプ大統領は無配慮なツイートを行い、デモ隊の感情を逆なでするような行動をとっています。こうしたトランプ大統領の行動によって今後デモがさらに過激化する可能性があります。

Twitter上で強硬策を示したトランプ大統領

Twitterでトランプ大統領が発言した内容が大規模な暴動に火に油を注ぐ結果になってしまっています。トランプ大統領は5月29日にデモ隊を悪党だと断言し、略奪が始まれば銃撃が始まると武力行使による制圧を示唆する内容をTwitterに投稿しました。こうしたトランプ大統領の発言が黒人が虐げられてきた過去を逆なですることになり、デモ隊からの反発を呼んでいます。

デモがさらに過激化する可能性も

社会心理学の研究によって、集団はその集団内の傾向をより一層極端なものにさせる傾向があるという集団極性化という現象が明らかになっています。この集団極性化にトランプ大統領の発言が加わることによって、デモ活動がさらに過激なものに変わっていく可能性もあります。トランプ大統領はこれまで中国やイランなどに対して人権を守るべきだと言う主張をし、内政干渉ともとれる行動をとってきました。しかしながら、デモ活動が活発化することによって、大統領選挙を今年の11月に控えるトランプ大統領はそうした国々への干渉をしている余裕がなくなる可能性があり、外交方針の転換を迫られる可能性があります。