ドイツ銀行の破綻の危機
ドイツ銀行は、世界各国で金融サービス全般を取り扱う、ヨーロッパを代表する金融機関のひとつです。 そのドイツ銀行に、不吉なニュースが流れています。下げ止まらない株価を見て、近く破綻するのではないかとの噂です。イギリスのEU離脱問題がくすぶる中で、ドイツ銀行の現状と今後を検証します。
ドイツ銀行の株価は2015年ごろから下落を続けている
ドイツ銀行の株価は、2015年1月に30ユーロ前後で推移していましたが、現在(2019年11月中旬)7ユーロ前後にまで下がっています。実に75%以上も下落した計算です。 企業の総資産から借金を引いたものを純資産と呼びます。借金を返してもお金が残れば、基本的に会社は潰れません。そのため、この純資産と株価を比較して企業の安全度を測ります。 しかし、隠れた借金があるのかと思えるほどにドイツ銀行の株価に伴う時価総額は、ドイツ銀行の純資産の価値より下落しています。
世界中でリストラが行われている
ドイツ銀行は2018年に4年ぶりの黒字を計上しますが、2019年4月以降は再び赤字に転落します。それを受けて、2019年7月には全行員の2割に当たる1万8000人のリストラを発表しました。 まずメスを入れたのは、収益力の落ちた株式取引部門です。主に株式トレーダーがその対象です。発表の翌日から、シドニー、香港、ロンドン、ニューヨークでリストラを告げられた社員が、早々とオフィスを去っています。 株式部門の収益は各社とも頭打ちであるため、トレーダー職の人々にとっては再就職も難しい状況であると言えます。
ドイツ銀行の業績悪化の原因
ドイツ銀行に限らず、世界中の銀行はビジネスモデルの転換を迫られています。 各国ともに低金利政策を続けており、融資で稼ぐ旧来のビジネスでは収益を得られなくなったからです。 そんな中でドイツ銀行は、CDSといったデリバティブ取引に新たな収益源を求めます。また、不正問題や巨額の罰金も予想外でした。では、詳細を見ていきましょう。
CDSなどのデリバティブ
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)とはある企業の債権を保有しておきながら、債権を発行した企業の破綻時にあらかじめ取り決めた額面で第三者に買い取らせることができるという保険のようなものです。その代わり債権を発行した企業の信用に合わせ変動する保険料を第三者に支払う必要性が生じます。このようにCDSとは債権を保有しながらリスクのみを外部に切り離すことができるの新たな取引のことを意味します。 従来の株式や債券から派生した新しい取引をデリバティブ取引と呼びます。 2011年にギリシャが経済危機に陥った時、ギリシャのCDS債を発行していたドイツ銀行に多額の支払い義務が生じました。
サブプライムローン証券の不正販売に対する和解金の支払い
ドイツ銀行は、リーマンショックの引き金となるサブプライムローン証券も大量に取り扱っていました。 サブプライムローン証券とは、米国を中心に広がった低所得者向けの住宅ローン債券のことです。 2016年末、この住宅ローン債券の販売に際して不正を指摘されていたドイツ銀行は、米国司法省より72億ドル(約8500億円)の支払い命令を受けます。当初は140億ドルといわれていた和解金が、ほぼ半額で済んだことから、この時は信用不安に繋がりませんでした。
ドイツ銀行によるマネーロンダリング問題
マネーロンダリングとは、犯罪によって得た資金を隠すために、複数の金融機関等を経由させて、その出所をわからなくする取引の事です。 ドイツ銀行は、2017年にロシアの富裕層が関係したマネーロンダリングでニューヨーク州金融サービス局に4億2500万ドルを支払ったことがあります。 しかし、その後も社内の管理体制が改善されず、何度も検察と税務署の強制社宅捜索を受けています。そして、その度に株価が下がっています。
イギリスのEU離脱問題
もしイギリスが、合意なき離脱となった場合、欧州域内において人やモノの往来が滞り、欧州経済は長期の景気停滞に入ると言われています。 ドイツの貿易相手国は、輸出入ともに欧州域内だけで3分の2を占めます。そのため、中小企業が多く、工業品の輸出が特色のドイツにとっては、他のEU諸国以上に悪影響がでます。 合意なき離脱で、ドイツの中小企業が数多く倒産すれば、ドイツ銀行の不良債権となり信用不安が広がります。