\ 琉球風水志 シウマの占いページはこちら /

BCGワクチンは新型コロナウイルスへの抑制効果を持っているのか?

鷲尾 香一

もくじ

BCGワクチンは新型コロナウイルスへの抑制効果を持っているのか?

新型コロナウイルスの感染拡大にBCG(カルメット・ゲラン桿菌)ワクチンの接種が抑制効果を持っている可能性があるとの論文が発表された。これは、京都大学こころの未来研究センターの北山忍特任教授(米ミシガン大学教授)らの研究グループがScienceAdvancesに発表したものだ。

データで見る感染者・死者の増加数

BCGワクチンの接種を少なくとも2000年まで義務付けていた国々では、義務付けていなかった国々と比較して、新型コロナウイルスの流行初期30日間の感染者数、死者数共に増加率が低い。さらに、流行初期15日間でも同様の結果がみられた。

としている。 新型コロナウイルスの感染者数や死亡者数が国ごとに大きな差があるのは、「BCGワクチンの接種」に関連しているのではないかとの見方は、新型コロナウイルスの感染拡大初期から出ていた。しかし、BCGワクチンの効果については、国際比較データの分析に伴う方法での研究結果は出されていない。

 

BCGワクチンを接種していればアメリカの被害も少なかったのか?

今回の研究では、報告バイアスの体系的な影響を最小限に抑え、統計が全体で等しくなるように短い初期期間を対象として、少なくとも2000年までBCGワクチンを義務付けてきていた国と義務付けていない国で、新型コロナウイルスの感染症例(134か国)と死亡症例(135か国)の両方における日々の増加率を分析した。  その結果として、「BCGワクチンの接種を義務付けていた国と義務付けていなかった国では感染者数、死者数共に大きな差が出ている」ことが明らかになった。  論文の中では、例えば米国ではBCGワクチンの接種を制度的に義務付けたことは一切ないが、仮に接種義務を数十年前に制度化していれば、2020年3月30日における死亡者総数は実数の2467人に対して、667人と推定できるとしている。これは、実数の約27%にとどまる。

日本ワクチン学会の見解は

そして、今回の研究結果について、「BCGワクチンの接種義務の効果はかなり大きく、BCGワクチン接種義務の制度化により、新型コロナウイルスの流行を将来的に抑制できる可能性を示唆している」としている。  BCGワクチンの接種が新型コロナウイルスの感染拡大の抑制になっているのではないか、との見方が新型コロナウイルスの感染拡大初期から出ていたと前述した。実は4月3日に日本ワクチン学会が「新型コロナウイルス感染症に対するBCGワクチンの効果に関する見解」を発表している。

日本ワクチン学会が示すポイント

この見解では、国内外より、幼少期の BCG ワクチンの接種の有無が各国の患者数や重症者数の多寡に関与しているのではないかという仮説 1が提唱されているとした上で、日本ワクチン学会の見解として、留意すべきポイントを以下のようにまとめている。 http://www.jsvac.jp/pdfs/kenkai.pdf

(1)「新型コロナウイルスによる感染症に対してBCGワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。 (2)BCGワクチン接種の効能・効果は「結核予防」であり、新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防を目的とはしていない。また、主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない。 (3)本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCGワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない。

1951年の結核予防法大改正によって法制化されたBCGワクチン

そもそも、BCGワクチンは結核に対する予防として接種されている。国内では、1949年にBCGによる結核予防接種が法制化され、30歳未満の人に毎年ツベルクリン反応検査を行い、BCGによる免疫が確認されなかった場合は繰り返し接種を行うこととされた。 その後、1951年の結核予防法大改正によって凍結乾燥BCGワクチンの接種が法制化され、さらに、何度か制度の改正が行われ、1974年にはBCG接種の定期化により、乳幼児(4歳未満)、小学校1年生、中学校2年生の3回に定期化された。そして、2013年に「接種対象者は生後1歳に達するまで」という現在の接種方法になっている。

 

結核だけでなく様々な病気に対して効果が見込める

実は、BCGワクチンは結核だけではなく、様々な病気に対して効果が認められており、膀胱ガンでは標準治療としてBCG投与が行われている。また、ハンセン病など他の抗酸菌感染症に対する予防効果も認められている。 ところが、BCGワクチンがどのような形で他の病気に対して効果を現しているのかについては、いまだに解明されていない部分もあるのだ。こうした点からも、BCGワクチンが新型コロナウイルスに対して、どのように効果を発揮しているのかが解明されるのには、時間がかかりそうだ。

BCGワクチンを活用することへの意味

しかし、新型コロナウイルスに対して、いまだ有効なワクチンや治療薬がない以上、「BCGワクチンは新型コロナウイルスに効果がない」と決めつけて、除外するのは如何なものだろうか。 少なくとも、BCGワクチンは長い接種の歴史があり、副作用についてはかなり明らかになっている。その上、結核以外の病気に対しても効果があることがわかってきている。こうした点からは、BCGワクチンを新型コロナウイルスの予防薬として研究を進めていくことも必要だろう。

 

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

もくじ
閉じる