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菅義偉新首相を待ち受ける試練と可能性:カギは北朝鮮

浜田 和幸

もくじ

安倍首相の最側近としての菅氏

安倍首相の突然の辞任劇を受け、新たな首相の座は8年近く、最側近として支えてきた菅官房長官の元に転がり込んだ。二世、三世といった世襲議員が多い中、珍しい“たたき上げ”として派閥にも属さず派手な言動はないが、党内を巧みにまとめ霞が関の官僚機構も動かし、安倍政権を陰で支えてきた存在である。 かつて総務相として初入閣を果たした時には、今ではすっかり定着した「ふるさと納税」構想を打ち上げた。 秋田県の出身であるが、神奈川県横浜で長年、市会議員として活動し地方創生には深く関わっている。 とはいえ、最大の課題は外交であろう。 安倍首相は「地球儀を俯瞰する外交」と銘打ち、在職中には100か国近くを回り、国際的な舞台で日本の顔として存在感をアピールしてきた。 中でも、就任前のトランプ大統領の元には各国首脳に先駆け、本間ゴルフの「金のクラブ」をお祝いとしてプレゼントし、「シンゾー!ドナルド!」と、ファーストネームで呼び合う親密な関係を豪語するまでになった。

安倍政権とトランプ大統領

もちろん、いくら頻繁にゴルフを共にし電話会談を重ねたからと言って「トランプ・ファースト」の大統領にとっては、「何でも言うことを聞くシンゾーはキャッシュ・ディスペンサーのようなもの」としてしか認識されてこなかった。 なぜなら、トランプ大統領の元を任期半ばで辞任、あるいは解任された多くの側近らの回顧録を見れば「在日米軍の駐留経費は4倍に増やせる。 でなければ米軍を撤退させると脅せば済む話だ」といった、日本を依然として占領下にあると見なしているような傲慢なトランプの姿勢が目白押しだからである。 にもかかわらず、そうした「トランプ・ファースト」の対日政策を一向に正すことができなかったわけで、「シンゾー・ドナルド」関係は実際のところ底の浅いものであったと言わざるを得ない。

海外諸国の菅氏による認識

では、新首相となった菅氏の認識はどうだろうか。 「当面の最大の課題はコロナ対策と経済の両立だ。当然のことだが、安倍首相が進めたアベノミクスや日米安保を基軸とするインド太平洋戦略を継承する」と繰り返し述べている。中国との関係については、「習近平国家主席の国賓としての来日はコロナ対策を最優先する現時点では日程調整などを行うことはできない」とコロナ禍を「勿怪(もっけ)の幸い」とばかり、明言を避けることに必死である。 その一方で、韓国との関係については、解決済みの慰安婦問題を蒸し返す文在寅(ムン・ジェイン)政権には「断固とした姿勢で臨む」とやたらと強気である。 また、安倍首相が辞任会見で「痛恨の極み」と述べた未解決の北朝鮮による日本人拉致問題につては、「前提条件を付けずに、金正恩委員長に会う用意がある」と踏み込んだ。 しかし、これは安倍首相が繰り返していたもので何ら策のないことを明らかにしただけの話である。

菅氏を注視する北朝鮮

実のところ、北朝鮮は「ポスト安倍時代」の日本の出方を注視している。 相次ぐ災害で食糧事情も逼迫し、トランプ大統領に期待したリゾート開発計画も進まず、経済的落ち込みは半端ない。 そのためか、「全国から犬を集め、食料不足に対処させざるを得ない」有様である。 ピンチに陥る北朝鮮に対し、トランプ大統領は「再選の暁には、金正恩と真っ先に再会したい。 自分が大統領に選ばれていなければ、今頃、アメリカと北朝鮮は戦争に突入していただろう。 北朝鮮と話のできるのは自分しかいない」と、相変わらずの自己中ぶりである。 しかし、苦境に陥っている北朝鮮の持つレアメタル資源や観光資源の開発に注目するトランプ大統領は利権がらみの話には目がない。 安倍首相が「日本人拉致問題を金正恩委員長に伝えて欲しい」と要請しても、「分かった。話しておく。話したぞ」というだけで、本気度は感じられない。 第一、北朝鮮で投獄され拷問の結果昏睡状態に陥り、アメリカに搬送されたものの、帰国後に死亡したアメリカ人大学生の補償についても、世論や両親の訴えに対しても、知らんふりのトランプ大統領である。 人の命よりも自分のビジネスが大事というのが、トランプ流ということだ。

北朝鮮の思惑

そんなトランプ大統領に北朝鮮との仲介役を頼んでいたわけで、安倍首相の他力本願の交渉姿勢では局面の打開は絵に描いた餅に終わってしまった。 菅官房長官は拉致問題の担当大臣も兼任していたわけで、北朝鮮との交渉には積極的に対応したいと考えているようだ。 とはいうものの、安倍首相と同様で、北朝鮮との独自のパイプはない。 実は、北朝鮮は110もの国々と外交関係を結んでいる。 首都ピョンヤンにはヨーロッパやアジア諸国の大使館が設置され、外交関係のないアメリカですらスイスの大使館経由で北朝鮮とは交渉を重ねてきていた。 現時点ではコロナの影響で、多くの外交官が北朝鮮から帰国しているが、水面下では北朝鮮との関係は続いている。 日本では知られていないが、駐ピョンヤンのドイツ大使夫人は日本人だった。 また、金正恩委員長の父親、故金正日総書記の料理人であった日本人は幼い頃の金正恩の遊び相手役も務めていた。 北朝鮮で地元の女性を妻としてあてがわれ、住まいも日本料理店も提供されている。 他にも戦後、北朝鮮出身の夫に連れられ「地上の楽園」と信じて北朝鮮に渡った日本人妻2000人とその親族が現地には数多く残されたままである。 事程左様に、北朝鮮の内部事情を知るには様々なルートが十分に生かされないまま残されている。 ところが、つい最近でも日本は駐韓国大使に、「北朝鮮への国連制裁を維持することが何より重要だ」と韓国の南北統一相に進言させている。 これでは、金正恩としても日本の新首相に会う必要性を感じないだろう。 「11月の選挙で再選されれば、自分に真っ先に会いたいとトランプ大統領は明言している。ならば、その時に日本の新首相に制裁を解除するように頼めばいいだろう。アメリカにはノーと言えないのは安倍も菅も同じだろう」と高を括るっているに違いないのである。

北朝鮮の資源開発が菅氏の切り札か

つまるところ、現状のままでは、菅外交は漂流しかねない。 というより、「菅丸」は船出そのものができないだろう。 ではどうすれば良いのか。アメリカが本気で日本の望む拉致問題の解決に乗り出さざるを得ないような状況を作ることだ。 そのためには、トランプが喉から手が出るほど欲しがっている北朝鮮に眠るレアメタルの情報を活用する時である。 日本は30年に渡って朝鮮半島を植民地化し、統治した。 その間、北朝鮮に眠る地下資源の現地調査を徹底的に実施したものだ。 実際に北朝鮮の中国国境周辺を中心にタングステン、コバルト、ニッケルなど地下資源の埋蔵状況を隈なく調べ上げた。 財閥系の三菱、三井や旧満鉄などが将来の朝鮮半島の経済発展に欠かせないものとして「足で稼いだデータ」が日本には大切に保管されている。 アメリカは資源探査衛星を使って空からの情報は収集しているが、実地調査はできていない。 そのため、アメリカ政府は日本に対し、そうした北朝鮮の地下資源に関する情報を共有して欲しいと、これまで何度となく要請という名の圧力をかけてきていた。 幸い、日本政府はこの要請に関しては明確な回答を避け、今日に至っている。 何しろ、総額7兆ドル(約750兆円)と目される北朝鮮の地下資源であり、トランプ大統領が狙うのもうなずけよう。 日本とすればアメリカの力も利用しながら、北朝鮮の資源開発に協力できるという「隠し玉」というか最終秘密兵器があることを肝に銘じることだ。 もし、アメリカがこうした北朝鮮の地下資源に関するデータを欲しいというのであれば、金正恩委員長に日本人拉致問題を解決するよう本気で迫るように働きかけることである。 希少金属は氷山の一角に過ぎない。 菅新首相が誕生した際には、先ずは日本の有する対米、対中、対朝鮮半島カードを総ざらいし、掛け声倒れに終わってきた安倍外交の弱点を乗り越えて欲しいものだ。

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