菅新総理のコロナ対策は“トランプ・ワクチン”頼みか
国際未来科学研究所代表 浜田和幸
菅義偉新総理の最大の弱点は外交か
菅義偉新総理の最大の弱点は外交だと言われている。 昨年、ワシントンに乗り込み、ペンス副大統領と面談の機会を得たとはいうものの、単なる顔見世に過ぎなかった。その点は、「地球儀を俯瞰する外交」を掲げ、世界100か国近くを飛び回った安倍前総理とは大違いになりそうだ。 今回の総理就任に際しても、海外からは不安視する声が聞かれる。
電話会談に臨んだ菅総理
そうした不安を払拭しようということであろうが、9月20日のオーストラリアのモリソン首相を皮切りに、アメリカのトランプ大統領とも初の電話会談に臨んだ菅総理である。 今後も、順次、諸外国のトップとの電話による「挨拶外交」を展開するという。しかし、電話で、しかも通訳を介しての10分から20分の会話では、相手の不安を解消し、新たな関係を打ち立てるなどはとても無理な話であろう。
順調な滑り出しとなった電話会談
とはいえ、トランプ大統領との電話会談は順調に行ったようで、直後の記者会見では高揚気味の菅総理であった。 曰く、「コロナ対策や北朝鮮問題で協力することで合意した。大統領からはこれからは24時間いつでも電話してほしいと言われた」 トランプ大統領も得意のツイッターで早速、菅総理を持ち上げた。「日本の新しい総理はたたき上げの人生を歩んできた大した奴だ。一緒に大きな仕事ができるだろう」
アメリカファーストは変わらず
そう願いたいのは山々だが、問題はその「仕事」の中身である。何しろ、11月3日の選挙を控え、再選のためにはあらゆる手段を講じる姿勢を強めている「トランプ・ファースト」と異名をとる大統領のこと。敵対するイランや中国との戦争という「オクトーバー・サプライズ」もあり得るとして、世界が注目しているほどだ。 いくら菅総理が「日米安保が日本の外交安全保障の機軸で、開かれたインド太平洋戦略の要(かなめ)である」とアメリカ重視の気持ちを訴えても、相手の関心は「じゃあ、アメリカ製の武器をいくら買ってくれる?中国との戦争になったら、自衛隊は米軍と共に戦うだろうな?コロナ対策を最優先するなら、アメリカ発のコロナ・ワクチンをどれくらい輸入してくれる?11月3日までに返事をくれ」といった自己中ぶりである。
トランプ大統領からすれば、願ってもないチャンスか
というのも、菅総理はどんな質問にも「コロナ対策を最優先する」という一本調子で応じているからだろう。 「総選挙の日程は?」、「習近平国家主席の国賓来日は?」はたまた「東京オリンピックの開催は?」と何をたずねられても、答えはいつも同じで、「当面はコロナ対策に万全を期す」というもの。 便利な言い訳かも知れないが、あまりに「スカスカ」答弁ではないかとの失望感も広がっている。トランプ大統領からすれば、願ってもないチャンス到来というわけだろうが。
感染拡大に歯止めがかからない新型コロナウイルス
確かに、世界では新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大に歯止めがかからず、その数は3000万人の大台に乗り、死者も軽く100万人を突破しそうな勢いである。 とはいえ、感染者の数を誤って130万人も余計にカウントしていたイギリスの健康保健省や死因を新型コロナウィルスと報告したにも係わらず「94%が別の原因であった」ことを認めたアメリカのCDC(疾病対策センター)のいい加減な対応も発覚している。 一体全体、どこまで各国政府の発表するデータや専門家と称される人々の発言を信じてよいものか。やたらと不安感を煽り、ワクチンの開発と接種を急がせるための「製薬メーカーの陰謀ではないか」といった声まで出始めている。
日本だけが安心に過ごせることはあり得ない
いずれにせよ、一刻も早く治療薬やワクチンの開発が進み、世界が安心できる状況にならなければ、日本だけが安全で安心な暮らしに戻ることはあり得ない。 日本の一部には「日本人は日頃から手洗いやマスクの着用には慣れているので、海外と比べて感染者や重篤患者は圧倒的に少ない。GOTOキャンペーンでも感染者は10人もでなかった」と、日本人の清潔な生活スタイルを高く評価する傾向が見られる。 とはいえ、いくら日本人が清潔好きであったとしても、連日、数百人の単位で感染が広がっていることは由々しい事態である。しかも、感染元と目される中国はでは沈静化が見られるというものの、第二波の懸念は消えていない。その上、韓国、ロシア、インド、アメリカ、ブラジル、フランスなどでは猛烈な勢いで感染者も死亡者も増えている。官房長官時代にはインバウンド観光客の誘致策を積極的に進め、6000万人を目標に掲げてきた菅総理である。