IMFが日本の消費税を15%に引き上げを提言
1分でわかるニュースの要点
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少子高齢化でGDPが40年間で25%下振れ
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消費税10%増税でも景気低迷か
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増税が不況を招く恐れも
段階的に2030年を目処に提案
IMF(国際通貨基金)は日本の消費税率について2030年までに15%に、2050年までに20%まで段階的に引き上げていくことを提案しました。 これは高齢化により社会保障費が増大し財政悪化が深刻になり財政赤字が膨れ上がるのを減らすためだとし、先送りすれば将来世代に不利益をもたらすと指摘しています。
富裕層への課税についても提言
IMFは富裕層の保有資産に低率で課税する富裕税の実施についても提言しています。 また日本では株式の配当や譲渡益に課される金融所得課税が一律20%となっていることについて富裕層に対する優遇が目立っているとし、所得再分配を強めるために金融所得課税の税率を30%まで段階的に引き上げるこも提言しています。
日本のGDPが下振れする可能性を指摘したIMF
IMFは今後の日本の少子高齢化と人口減少によってGDPが下振れする可能性を指摘しています。このIMFのねらいは何でしょうか。 IMFは国際通貨制度の安定や国際貿易を促進するため、年1回加盟国の政府や中央銀行と協議するサーベイランス(政策監視)を行います。したがって今回のIMFの提言には財務省や日銀の意向が反映されたものと考えられます。
少子高齢化と人口減少
IMFは今後日本では少子高齢化により働き手世代が減少して税収が減ると指摘しています。一方財政支出も高齢者が増えて年金や医療費などが増加し国の財政運営は厳しくなるとしています。 この対策として日本に非正規労働者の技術訓練など労働市場の構造改革を求めています。また人口は今後40年間で25%以上減り、GDPは25%下振れする恐れがあると警告しています。
社会保障費の補填に
IMFは日本のGDPに対する債務残高が2030年までに250%を超えるとし、財政の持続可能性の維持には具体化された枠組みが必要と指摘しています。 財政の健全化には消費税率の15%引き上げによる赤字幅2.5%の減少に加え、富裕層増税、年金や医療など社会保障費の見直しなどにより赤字を最大GDPの6%分改善できると試算しています。
消費税10%へ増税時は低迷?
2019年10月の消費税10%への増税による景気への影響について、調査結果では低迷の傾向が見られるとしています。 NHKが消費増税から1ヵ月後に行った小売りや外食などの主な企業50社への調査では、企業の6割が前年同時期の売り上げより減少したと回答しています。 また総務省が発表した家計調査でも2019年12月の家庭の消費額は物価変動の影響を除いて前年同月を4.8%下回ったとしていますが、今後の動向については新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり注視したいとしています。
消費税を上げることで解決になるのか?
IMFの消費税を段階的に上げる必要性への提言に対して、消費税を上げることが解決になるのだろうかと疑問視する向きもあります。 消費税の増税が不況を招く恐れがあるためです。消費税を上げれば消費者は消費を抑え、企業活動が減衰し総合的な税収は減少する可能性があります。 厚生労働省によれば2019年12月の実質賃金は前年比0.9%減と3カ月連続で減少し、2019年の月平均でも前年比0.9%減です。消費税増税が賃金も押し下げれば財政再建は遠のきます。今後慎重な議論が求められます。